Call My Name ！ Ⅱ (ページ3)

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　＊

　消えそうな声。いつもの溌剌さはもう見るかげもない。

　ずき、と胸が痛くなった。なんで＿＿＿そんな顔を私に見せるの？その顔は何を現してるの？わからない。わからない。………けど。

「私が、私である為に」

「…………………………そう、すか。

　ッ、教えてくれてありがとうございます！帰りましょ！」

「あっ、黄瀬！」

　黄瀬はいつもの明るく軽い調子でそう言って前を歩き出す。私も後を追った。

　*

　朱センパイの言葉は＿＿＿＿重かった。
　本人の言う通りただの好き嫌いじゃないじゃない。それは"生きることがすべてボクシングなんだ"って、俺は思った。

　人形のような顔、小さな小さなその身体に、観衆の期待や自分の想い、そして敗者の気持ちまでも背負ってこの人は「女王」と呼ばれてるのだ。

　試合に来る前、俺は怖かった。朱センパイがボコボコになってしまうのが、怖かった。けどこの人はそんなこと気にしてない。"勝つことが生きること"だからそんなの関係ないんだ。

　普段の口数よりも多い言葉が、振り返り際に見せた楽しげな笑みが＿＿＿＿悲しかった。

　だからこんな最高なシチュエーションでも告ろうとは思わなかった。

　この人はボクシング以外何も知らないんだ。何も欲してない。自分は＿＿＿＿この人に、必要とされてない。

　じゃあ、どうしたら必要とされる？

　この人からボクシングよりも大事だと言われる方法は？

　帰る時、いやこれからもずっと考えるだろう。俺のライバルは＿＿＿＿ボクシングなんだ。

　それを心に刻んで、朱センパイと何気ない話をしながら帰路を辿った。

月光

(黄瀬はずっと話しかけてきた。けど、どこかおかしい)

(ボクシングを語る時の朱センパイはイキイキしてる、嫉妬した)