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 伏黒甚爾が放った最後の弾丸がAの胸元に当たって、そして光が周辺を包む。

 ───鄒霊呪法。

 Aの術式は少し面倒なものだった。
 物を介してでないと術式が発動しない。胸元のポケットに忍ばせた『鈴』が破壊され、初めて結界が展開された。

 媒介する物はなんでもいいが、出来れば魔除けに関する物が扱いやすい。

 この日の為に、まだ鈴は服の中に忍ばせている。

 あの男の攻撃を全部防ぐなんて考えてはいない。
 五条か夏油が戻ってくる、その間足止めが出来ればそれでいい。

 だから、逃げろ。夏油傑。
 貴方が絶望したその理由が何となくわかるようになったから。

 私が生きるためにも、貴方が心を壊さないためにも──

「逃げろ!」
「…ッ、必ず戻る…っ!」

 悔しそうに眉を顰めていた。
 友人になると、ここまで心配してもらえるんだ。とどこか場違いな思考が浮かんで消えていく。

 ふたりが逃げた方向に伏黒甚爾が向かっていこうとするので、Aは呪具を取り出しブーメランの感覚で投げ飛ばす。

 ノールックで避けるなよ。毎回毎回。

 戻ってきた呪具をもう一度投げようとすれば、ゆっくりと男の視線がこちらに向いた。

 不思議と怖いと感じない。
 何度も経験してきた死のおかげか、恐怖が少し麻痺しているらしい。そんなの要らない特典だ。

「邪魔くせぇな、お前」
「……伏黒」
「あ?なんで知ってるんだよ」
「伏黒、恵」

 伏黒甚爾は一瞬訳も分からないと首を傾げたが、徐々に瞳を開く。
 なんで知ってる、その声音は警戒するように低い。

 なんで知ってるか教えてあげようか。

 一度貴方に勝ったことがあるから。
 五条が助けに来て、伏黒甚爾は見事殺された。

 全部終わったと思っていたのに。
 目の前の男にはふたりの子供がいて。それを後に知ったAは、間接的に子供の父親を殺したことに後悔と絶望を抱いた。

 その後ふたりが禪院家に売られ、酷い扱いを受けた後姉の方は自死したらしいことも。

 だから、戻ってきた。

 自分で命を捨てたのはあの時が初めてだった。誰かの為に命を消費したのは。

 今度は何も間違えないように。
 
「貴方を止める。天内も五条も夏油も…黒井さんだって、誰も殺させない」

 ようやくこの夢も終わる。
 私の地獄も終わるのだ。


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(プロフ) - 早く続きが楽しみです!泣いちゃいました更新楽しみに待ってます。 (3月29日 23時) (レス) @page33 id: 53e14be78c (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 最高です!!泣きました (3月28日 5時) (レス) id: a05e9c9f42 (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ - とても面白いです!更新楽しみに待ってます! (3月26日 21時) (レス) @page24 id: 4ea54ee5be (このIDを非表示/違反報告)
セネリオ - 面白いです!24時間が待ち切れない…!明日も楽しみにしております。 (3月23日 21時) (レス) id: f9511cc749 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なっしー | 作成日時:2024年3月21日 18時

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