成功 ページ9
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天内理子に向かって突進する。
夏油に向けて突き飛ばすと、面白いほど目を見開いたふたりの顔が見えた。
タンッ、と音がしてAのこめかみに銃弾が掠る。
───苦節十数回。
やっと天内理子の救出に間に合った感動に浸っている場合ではない。
伏黒甚爾が続けて何発も鉛玉を撃ち込んでくるのだから。
「A!」
この夢では比較的関係性が良い夏油傑に腕を引かれる。
呪霊を盾にして、Aと天内を守っていた。
「…っ、ぐ」
「な、だ、誰!?」
「…足止め役、です…はや、く、夏油さんと…にげて」
こめかみは撃たれたけど、呪力で包めば痛みは誤魔化せる。
うん、動ける。
そんなに悲しい顔をしないで、理子ちゃん。
庇ってくれてありがとうなんて、感謝される資格もないんだよ。私は。
貴方を何回も救えなかった、役立たずなんだから。
(やっと手にした好機を逃すもんか…!)
夏油傑の肩を引き寄せて、前に出る。唖然とした顔で、行くななんて叫ばれている。
大丈夫、大丈夫だから。伏黒甚爾の狙いは理子ちゃんだけ。
夏油傑は死なない。
五条悟は死にかけているだろうけど、あの人も死なない。
最強は伊達じゃない。もっと強くなることを、夢の中で散々見てきたし、そんな彼に殺されてきた。
もう繰り返すのは嫌だ。
作り笑顔が上手になっていくのも嫌だ。
分かりきった未来に絶望するのも嫌だ。
震える身体を抑えて、呪具を取り出して伏黒甚爾の前に立つ。
「早く逃げてください。夏油さん」
「何言って…」
「五条悟は生きてる。だから早く逃げろ」
目の前の男は首をかしげ、そして面白おかしく口角を上げた。
「死んだよ、あの坊は。俺が殺した」
何回か聞いた言葉だ。以前は口を挟む間もなく殺されてしまったので、伝えることが出来なかった。
だから今回は惜しみなく言葉を吐くつもりだった。
「死ぬわけないだろ。現実見れば?」
もう死ぬもんか。この日を乗り越えれば平穏な日々が待っているんだ。
もう失敗はしたくない。
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妙(プロフ) - 早く続きが楽しみです!泣いちゃいました更新楽しみに待ってます。 (3月29日 23時) (レス) @page33 id: 53e14be78c (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 最高です!!泣きました (3月28日 5時) (レス) id: a05e9c9f42 (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ - とても面白いです!更新楽しみに待ってます! (3月26日 21時) (レス) @page24 id: 4ea54ee5be (このIDを非表示/違反報告)
セネリオ - 面白いです!24時間が待ち切れない…!明日も楽しみにしております。 (3月23日 21時) (レス) id: f9511cc749 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なっしー | 作成日時:2024年3月21日 18時