【呪術廻戦】最強のふたりに執着された

揺らぎ ページ34

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　あぁ、こんな思いを抱えていたんだな。
　涙の粒が降り注ぐなか、五条悟はAの言葉を受け止める。

　明確な怒り。明確な悲しみ。

　全てぶつけられ吐き出す姿に、『やっと声が聞けた』と何処か安堵する。

　───やっと、Aの本音が聞けた。

　五条の襟首を掴む両手は、あまりにも非力でちっとも苦しさを感じない。
　だから、簡単に解くことも出来たし、気がついたら涙を拭うために目尻に触れていた。

　ピタリとAの身体が硬直する。

　言葉を掛けると、濡れた瞳が瞬いた。

　ソファーに座り直して目線を合わせ、頬に触れて、ゆっくりと涙を拭う。濁った目は、相変わらず光が宿らない。

　本当は、今すぐにでも腕を引いて抱きしめたい衝動に駆られている。
　けれど、なけなしの理性がそれを押し止めている。正直、Aに触れること自体怖くて怖くて仕方ない。

　少しでも間違えてしまえば、パリンと崩れてしまいそうだから。

　再会した日に怯えさせてしまったから、心を開いてくれるまで慎重に接してきたつもりだった。

　けれど、触れてしまった。更にはこんなに泣かせている。
　後戻り出来ない状況に、最強である五条悟は焦りを表に出さないよう、極めて冷静にAのことを見つめる。

　大切なものが壊れてしまうから。裏切られるのは嫌だから。
　そう言って、彼女は子どものように泣いていた。

　そんな事にはならない。今の五条悟と夏油傑が、そんな事にはさせない。

　だから、『壊れないよ』と甘く優しい声で伝える。少なくとも、今の自分達は壊さないし、壊したくない。

　彼女の大切なものを、一緒に守りたい。

　まるで赤子に叩かれるような強さで胸板を殴られても、五条悟の意見は変わらない。

「……っ」
　
　俯いて、弱々しい力で服を握られる。
　縋り付くような仕草に、五条の胃の上がギュゥッと締め付けられて、胸の奥が苦しくなった。

　今すぐ、思い切り抱きしめて安心させたい。
　自分達が粉々に砕いてしまった心を掻き集めて、元に戻したい。

　けれど、そんな事をすれば本当に彼女に嫌われてしまう。今でさえ怖がられているのに、もっと距離を取られてしまう。

　それは、嫌だ。

　ここまで追い詰めて傷つけて、消費してきたのは自分達なのに。と、心の中で自嘲した。



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