・ ページ32
・
「…どうして?」
「A?」
「今のふたりは何も、してないじゃないですか。私が勝手に…怖がって…気を、遣わせて…なんで、優しく…する、の」
押さえ込んできた言葉が溢れて出てくる。
五条悟は目を見開いて固まってしまった。
「……でも、僕達が犯した罪だよ」
Aの傍に移動して、膝を着いて見上げる。
目尻を下げ呟く声はまるで、許しを願うような音だった。
「最初の頃、僕達は君に酷い態度をとった。そして、君の事を身勝手な理由で殺し続けた。…本当に、ごめん」
思い出すように、悔いるように。
「…謝って、許されることじゃないし、そんな事…望まない。…でも、またAに会えて嬉しいってこと、沢山、救ってくれてありがとうって気持ちを、伝えたかった」
へにゃ、と今にも泣きそうに笑う。
優しくて、本当に五条悟なのか、疑ってしまう。
「ちょっとずつでいいんだ。無理強いはしないけど、分かってほしい。…償いもあるけど、それ以上に、君を大切にしたかったから」
大切なんて、初めて言われた。
「でも、Aにとってそれが負担になるなら…もう、やめ…る。…うん。やめるよ。…ごめんね」
ポタポタと、雨も降ってないのに五条悟の頬に水滴が落ちる。
綺麗な目が見開いて、ピシッと硬直してしまった。
「ぁ」
視界がぼやけている。なみだ。…私、泣いてるんだ。
彼の綺麗な顔を汚してしまった。どうしよう、止めないと。
泣き止んで、大丈夫だと伝えないと。
そう思えば思うほど、息ができない。ずっとずっと仕舞い込んでいた黒い感情が顔を出してしまう。
自分の気持ちが制御出来なくなる。
「…なんで、なんでよ」
体が勝手に動いた。五条悟の襟首を両手で掴む。
簡単に触れられたことに驚く余裕は無かった。迫り上がるモノが止められなくて、酷い泣き顔のまま口を開く。
「ず、っと、いやだったのに!…ゆるしてって、いったのに、ずっと、ずっと…ッ!!痛いの、嫌だった…!!死にたくない、のに、ずっと!!」
死にたくなかった。嫌だった。
許してほしかった。…もし、全部終わったら。普通の友達になれるのかな、なんて。
でもそんな終わりが見えない地獄をずっとずっと、さ迷って。
優しさも暖かさも、本当の友情も何もかも、諦めたのに。
全部諦めた今になって、そんなものを見せつけないでよ。
・
663人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
妙(プロフ) - 早く続きが楽しみです!泣いちゃいました更新楽しみに待ってます。 (3月29日 23時) (レス) @page33 id: 53e14be78c (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 最高です!!泣きました (3月28日 5時) (レス) id: a05e9c9f42 (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ - とても面白いです!更新楽しみに待ってます! (3月26日 21時) (レス) @page24 id: 4ea54ee5be (このIDを非表示/違反報告)
セネリオ - 面白いです!24時間が待ち切れない…!明日も楽しみにしております。 (3月23日 21時) (レス) id: f9511cc749 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:なっしー | 作成日時:2024年3月21日 18時