psycho [TOP4] (ページ38)

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赤の部屋ページ38

誰かを守るために自分の手を汚すことは、私にできるだろうか。

もちろんそういう気持ちはある。

だけど生憎そんな場面になったことがない。

私がこの能力を使ってきたのはすべて意味がないことだから。

少し、羨ましくもある。

「A。」

「はい。」

初めて名前を呼んでくれたキヨさん。

そこに触れると彼がまた不貞腐れてしまいそうで私は返事だけを返した。

「俺の部屋、行くぞ。」

「キヨさんの部屋…ですか？」

「おお。行くぞ。」

トケイを見ると、短い針が12のところに行くところだった。

夜に短い針と長い針が重なったら日付が変わると教えてもらったから、もう少しで日付が変わるのだろう。

ここに来る前より多少は賢くなっただろうか。

「早く来いよ。」

もう部屋を出たキヨさんの背中を追いかける。

とは言っても隣の部屋。

中に入ると、背の高い本棚が目についた。

それがいくつも並んでる。

「Aの部屋にあった本、あれ俺がうっしーにあげたやつね。

こんなんだけど頭はいいんだぜ。」

意外だ。勝手に一番頭が悪いものだと思っていたから余計に。

キヨさんはその棚からいくつか本を抜き取った。

「これ、Aでも読めそうなやつ。」

「え、3つも…？」

「本は冊で数えんだよ。」

「サツ、」

「おう。明日は俺が勉強教えてやるから。」

「ありがとうございます。」

意地悪じゃなくて、本当の笑顔。

心がぽかぽかして、心地よかった。