【H×H】王子様なんて居なかった【イルミ】

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「昔、約束をしたから。多分好きだったんだと思う」

まるで他人事のように言う彼が、あまりにも別人に見えて、次の言葉を待つ。
だけど、その続きが発せられること無く、イルミは掴んだままだった私の腕を引き寄せて、今では至近距離にまっすぐ見られてる。

「察してって言ったよね？」

そう言葉を紡いだ。

「察するも何も、私は知らない」

「愛して、と言って、いざ俺なりのアイを伝えると、次は好きにさせてって、わがまますぎない？」

…ん？俺なりの愛？いつ伝えられた…？

結婚話？それともすだれ？
それとも…キス？

「それは、素直に謝るけどね。今の私と昔の私は別人だと思ってって言ったよね？」

「なんで？AはAなのに？」

数時間前にイルミ見つけられた手首の後にそっと口付けられたと思ったら、次は歯を立てられた。

「痛い」

「答えて」

ギョロっと覗いてくる黒目。
ほんとに何を考えてるのかわからない。
大体…イルミは本当に私が好きなの？

「…それでも…今の私はあなたのことは確かに気になる存在だと思ってるけど、そこに好意はないの、だから、イルミが言ってることが本当なら…惚れさせてよ」

そうきっぱり言うとイルミはやっと離れてくれた。

「わかった。そしたら、うちに来るんだよね？」

「うん」

「今度は忘れない？」

「うん」

「忘れたら針、刺すから」

そう言って、開いた窓から去ろうとするイルミを思わず引き止める。

「…約束って…昔した約束って何…？」

約束を覚えてないのは流石に申し訳なく感じて、一応聞いてみる。

「それ聞いてどうするの？」

だけどごもっともな返答が返ってきて口籠。

「好きになったら髪伸ばすから察して、そう言っただけ。その1ヶ月後くらいに記憶を無くしたけど、髪を切っては伸ばしてを続けたから、多分そういう事」

説明を受けて、そのあとイルミは去っていった。

でも、ここで私は疑問を抱いた。

なんでイルミは私を忘れる必要があったのか。

私の場合は意図的な物だったけど、イルミの言い分から察するに本人は自分の意思でそうした…

謎は深まるばかり。

そんな中、1通のメールが届いた。

《イルミに番号とアドレス教えたから♡ byヒソカ》

取り敢えず、個人情報漏洩でヒソカを訴えたい。
そう思ったが、今後イルミがどう動くのかが少し楽しみで胸が踊った。

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