閑話：side安室―3 ページ29
これ以上、Aさんに恐怖を与えてたまるかと思い、男の蛮行を止めに入る。しかし、学習したのか、男も今度は簡単には押さえつけられてくれず、反撃をしようとして来た。
握り締められた拳は、まっすぐに僕に向かってくる。その程度の攻撃は簡単に避けることができるため、内心でため息をついた時。
『――安室さん！！』
車内から、Aさんが僕の名前を叫んだ。偽りの僕の名前を。
思わず、目を見開いてしまう。しかし、しっかりと男の拳は避けて、思わず車内にいるAさんを見つめてしまう。
恐怖のために震える体。小刻みに揺れるその小さな肩を見つめ、そして、ぼろぼろと涙を流しながら僕を見上げてくれているAさんを見つめる。少しだけ頬が赤いのは、多分、それだけ泣いた証なのだろう。しかし、彼女は確かに、僕を見てほっと安堵してくれたのだ。
それは、裏を返せば、僕はAさんに信頼してもらっているという証。だからこそ、自然と頬が緩んだ。
しかし、ここで見つめ合っていても仕方がない。
くるりと体の向きを男の方に向け、さりげなく、自分の体で彼女を隠すように動く。幸い、先ほど男が攻撃をして来てくれたおかげで立ち位置は多少変わっていて、こちらが動けば、Aさんを隠すことは容易にできた。
安「それで？あなたはいつまでここにいるつもりですか？」
言葉の中に、とっとと消えろというメッセージを多大に込めて、Aさんが僕の表情が見えないのをいいことに、思い切り睨みつける。
そう、冷酷な僕。黒ずくめの組織の顔。バーボンの僕。
男は僕の表情を見て恐怖したのか、さっさと逃げていく。
しかし、逃げたと見せかけて車のドアを開けた瞬間に何かをされたらたまったものではない。だからこそ、すぐにでも開けたい車の扉を我慢して、完全に安全になったのかを確認する。
これは、公安としての僕。
しばらく警戒していたけれど、もう大丈夫だと確信が持てたため、ポケットから車のキーを取り出してロックを解除する。そのまま運転席側の扉をあけて覗き込めば、体を震わせたAさんを見て、少し慌てて来ているジャケットを脱いで彼女の肩にかけた。
多分、汗をかいたのだろう。うっすらと額に汗が浮かんでいる。突然開けてしまったことで風が車内に侵入して体を冷やしてしまったのだろう。
安「大丈夫ですか？」
そんな、ありきたりな言葉しかかけられない自分に、悔しさが募った。
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妃沙(プロフ) - 明里香さん» 誤字のご指摘ありがとうございます！修正しました！ (2018年6月2日 20時) (
レス) id: 8817d67e5d (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 安室sideに誤字がありました。「毒の車」ではなく、「僕の車」です。 (2018年6月2日 19時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
妃沙(プロフ) - コメントありがとうございます！面白いと言っていただけてとても嬉しいです！更新頑張ります！！ (2018年5月27日 8時) (レス) id: 35e497a401 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 凄く面白いです！！、更新頑張ってください！応援しています！！！ (2018年5月26日 23時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：妃沙 | 作成日時：2018年5月18日 8時
