第三六訓 ページ36
Aの強さに場はざわめく。
唯一納得したように頷いたのは清光。
「…なるほど、だから一人で…」
Aが審神者に成り立て出会った頃。
安部の元へ行ったあの日、Aは言ったのだ。
何かあれば自分で対処できる、と。
ここまで刀剣と、しかも自分が歯の立たなかった相手に対応できるAの強さ。
不思議と疑問は沸かなかった。
「…くっ」
岩融は一度下がる。
Aは逆手で持っていた小太刀を両手に持ち直すと岩融にその切っ先を向ける。
「蛙の子は蛙？それとも鷲が鷹を産む？どっちの比喩が正しいのかわからないけれど…私は母様と父様の子だからね。刀剣を思うように甚振っていた父様と、それを殺した母様の子。…弱くはないよ」
女子が持つには手にあまるその二尺(60センチ程)の鉄の塊を、Aは軽々しく振るった。
ーーーﾋｭﾝｯ
岩融と女の間を縫うように刀は滑る。
女は今、何も武器を持ってはいない。
されど、神と人。
そこには圧倒的な差があった。
いくら物理的な攻撃が得意だろうと。
圧倒的な支配の前では。
「止まりなさい、A！」
初めて女がAの名を呼ぶ。
途端、かかったのは骨を蝕むほどの重圧。
「がっ、あ…ッ！」
これはいつだったか、三日月にも名を呼ばれた時のような。
…命を、縛る行為であり。
と、女は唐突にその力を緩めた。
「…Aを離さんか、女よ」
いつの間に移動したのか、三日月は女の首元に刀剣を押し付けていたのだ。
圧力から解放されたAは崩れるように地面に片手をつく。
「三日月、」
「俺らがどうしてここに来たのか忘れたか。…主に手を出してみよ、今この場でその首いただく」
それに続くように刀剣たちはその刃を女に向ける。
岩融はただじっとその様子を見ていた。
「…ねぇ、母様」
「な、によ」
「私は母様の事好きだったよ。…だって血の繋がった親子だもの」
Aは立ち上がる。
岩融が一歩出ようとしたのを女は止めた。
「おい主、何故」
「いいの、手を出さないで」
女も、立ち上がる。
「三日月、下がって」
「…あいわかった」
二人は向き合う。
こうしてみれば、ただの仲睦まじい親子であるのに。
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黎奈(プロフ) - はじめてコメントさせていただきます！！すごく面白かったです。完結お疲れ様でした！第四訓で宗三左文字が宗山左文字になっていらっしゃるのでご報告させていただきます。あと、ちょこちょこ報告に来るかもしれません… (2015年10月18日 22時) (
レス) id: 339ceb4b4b (このIDを非表示/違反報告)
華維璃(プロフ) - お疲れ様でした！とても面白かったです！小説の書き方、参考にさせて頂きます<(_ _)> (2015年9月22日 20時) (レス) id: 5dbf713d35 (このIDを非表示/違反報告)
連合(プロフ) - お疲れ様でした！ (2015年7月19日 17時) (レス) id: bbc5de6b90 (このIDを非表示/違反報告)
らい兎(プロフ) - 第三四訓の「突き出ているのは日本の大きな角。」というところもしかして日本→二本でしょうか？面白かったです。 (2015年7月13日 23時) (レス) id: 5d4b050560 (このIDを非表示/違反報告)
零玲飛(れいれと)(プロフ) - お疲れさまでした、面白かったです！宗近のじいちゃんが入手できないのが痛いですね。 (2015年7月10日 19時) (レス) id: 0bd3908221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：稜 | 作成日時：2015年4月10日 14時
