Ep.35 ページ35
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「吉田松陽って、あんたがずっと好きだった作家じゃなの?」
「その推しとこのイケメンたちとシェアハウス...?」
海の家の机を囲み、状況を咀嚼した友達の説明を改めて聞くとなんて少女漫画的展開なんだと思うが、両隣に座るこの2人にはときめきどころか溜め息が出る。
「Aが一生懸命銀時の小説読んでることは何回か見てたけど。まさか本人は目の前に作者がいるとは知らずにかぁ...銀時もいじわるするね。」
神威君は、同情なのか馬鹿にしてるのか。笑いながら肩をぽんぽんと叩いてくるが、私はとっくに悟っていた。あの家の住人だ。どうせ銀時さんを詰めたって、「聞かれなかったから」とかなんとかすっとぼけた顔をされるのだろうと。
「銀時さんのことはいいです...。でもなんで2人までいるんですか?」
「俺はこいつに無理やり連れてこられたんだよ。誰がこんなクソ熱い日にクソ熱い場所に行くか。」
「そんなこと言って、Aの水着が見れるって言ったら急に__」
総悟君はなぜか慌てた様子で神威君の口を塞ぐ。
よくわからないけれど、まあ要するに暇だということなのだろう。
「Aのそのテンションはなに?好きな作家と同じ屋根の下なんて良いじゃない。」
その友達の言葉にうーんと目を閉じる。
確かに中学生の頃から愛読してる小説だけど、まだ実感がわかないと言うか、想像と違いすぎるというか...。
「悲しいねぇ。先生様は引く程興味持たれてなくて。」
わざとらしい声が頭上から聞こえて、見上げれば予想通りの余裕そうな銀時さん。
「盛大なドッキリかと思ったけど...文学賞受賞者の水着って...。」
今は休憩中なのか、パーカーを羽織り、呑気に水を飲んでいた。
「野郎の期待を軽々しくかわしてくる格好してるヤツこそがっかりだろ。」
なんの話かと見ていると、
その銀髪頭は、躊躇いなく人のTシャツのネック部分を引っ張り、中を覗いてきた。
「ッそういうところです!」
大声響く海の家。
潮風も吹き抜けていく。
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S(プロフ) - めちゃんこ好きです!更新待ってます! (8月11日 14時) (レス) @page37 id: cc16e6db3c (このIDを非表示/違反報告)
春風 - 更新ありがとうございます!とっても嬉しいです!これからも楽しみにしています! (2022年11月30日 15時) (レス) id: 1ece860df7 (このIDを非表示/違反報告)
ツバサ(プロフ) - 更新待ってました…!すごい嬉しいです!銀さん作家だったんだと驚きでいっぱいです!あと文章の書き方がとてつもなく好きです、ありがとうございます! (2022年11月28日 8時) (レス) id: 1052176700 (このIDを非表示/違反報告)
むぎ - このお話大好きです…!更新待ってます! (2022年4月4日 18時) (レス) @page31 id: fc9ca49c49 (このIDを非表示/違反報告)
粥 - 何回見ても、ストーリー面白いし好きです!更新されること願ってます!!!! (2022年1月6日 23時) (レス) @page31 id: b23a2b20e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:□白澤□ | 作成日時:2020年12月1日 12時