Ep.29 ページ29
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あれから数日、
季節はあっという間に夏へと差し掛かる。
「 夏祭り....もうそんな季節なんですね.... 」
「 今年も晴れるといいですね 」
夏祭りの案内を掲示板に貼れば、園長先生ののんびりとした声が響く。
夕日が差し込む保育室には、まだ数人の園児が残っており、みんな折り紙に夢中だ。
ここ最近バタついてしまっていたけど、子供達の笑顔はいつでも癒しになる。
みんなの様子を頬を緩ませ眺めていれば、園児の見送りをしに玄関へ行っていた後輩保育士が、どこか興奮気味に私の元へ走ってく。
「 A先生!表にA先生のお知り合いだと言う男性がお見えになってるんですが... 」
「 知り合い? 」
擬音符を掲げたまま玄関口へと向かへば、にこにこと手を振る神威さんの姿。
「 神威さん!? 」
慌てて駆け寄れば、「驚いた?」なんて余裕気に笑う。
どう言う風の吹き回しなのかと聞く前に神威さんは話し続けた。
「 俺、あの店辞めたんだ 」
突然の事で酷く驚いた顔をしていたと思う。
そんな私を見て彼は楽しそうに笑った。
「 Aに一番に報告したくてさ。もう少しで退勤時間だろ?一緒に帰ろうよ 」
相変わらずマイペースだけれど。
大体の残り時間を伝えれば快い返事が帰ってくる。
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「 意外とあっさり辞めるんだなって思ってるでしょ?」
「 神威さんがと言うか、お店側があっさりと言うか...」
茜色の空。
シェアハウスに続く坂からは綺麗な街並みを見下ろす。
あの日から家にいる時間は増えたものの、夜になると何処かへと出掛けていた神威さん。
知らない間にそんな事が起きていたとは...行動の速さに驚いていたことをつかれ、鋭さには毎度ドキりとする。
「 そりゃ大変だったよ。泣き付かれもした 」
「 身請け金と言うか穴埋め用に数千万渡して離してもらったけど 」
「 数千...!?いいんですか...?そんな大金... 」
先程から驚かされてばかりいる。
目を白黒させていれば、その都度可笑しそうに笑う神威さん。
「 大した額じゃない。それに.... 」
「 お金よりも大切なものをやっと見つけたんだ 」
頬を撫でる風。
私を見つめるその人に、どういう事かと首を傾げれば
その白い手が伸びてきて、
「 何やってんだよ 」
背後から聞こえる声。
体を上下させ振り向けば、そこにいたのは表情を変えない総悟君。
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S(プロフ) - めちゃんこ好きです!更新待ってます! (8月11日 14時) (レス) @page37 id: cc16e6db3c (このIDを非表示/違反報告)
春風 - 更新ありがとうございます!とっても嬉しいです!これからも楽しみにしています! (2022年11月30日 15時) (レス) id: 1ece860df7 (このIDを非表示/違反報告)
ツバサ(プロフ) - 更新待ってました…!すごい嬉しいです!銀さん作家だったんだと驚きでいっぱいです!あと文章の書き方がとてつもなく好きです、ありがとうございます! (2022年11月28日 8時) (レス) id: 1052176700 (このIDを非表示/違反報告)
むぎ - このお話大好きです…!更新待ってます! (2022年4月4日 18時) (レス) @page31 id: fc9ca49c49 (このIDを非表示/違反報告)
粥 - 何回見ても、ストーリー面白いし好きです!更新されること願ってます!!!! (2022年1月6日 23時) (レス) @page31 id: b23a2b20e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:□白澤□ | 作成日時:2020年12月1日 12時