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Ep.28 ページ28

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「 あんた変。おかしいよ 」

「 ....何とでも言ってください...」



響くのは時計が時を刻む音。
温かい体温を抱き締めて離さなければ、おずおずとした腕が私の背中にまわる。



「 ..........本当におかしい。どんなに酷い扱いを受けたって涙ひとつ流れなかったのに... 」



小さく呟くその声は、ぎゅっと私を抱き寄せて。
首元に顔を埋めるから、揺れる髪がくすぐったい。




「 .........俺の家すごい貧乏でさ、昔から周りに馴染めなかったんだ。俺を虐げる人間も、貧しい家も嫌になって飛び出した。.... でも馬鹿だよな。学も何も無い俺が家出したところで何が変わるわけでもない。行き場に困っていた時に声を掛けてきたのが今の店のオーナーだった。」


「 最初は女の子とデート。こんなことであんな大金が貰えるのかって普通に働くことがあほらしく思えた。それからどんどんエスカレートしていって....もう元に戻れなくなった時に晋助と出会った 」

「 晋助はただ純粋に友として俺を傍に置いてくれた。...汚れた俺が彼奴の隣に立つ資格なんてないのに...」





「 .......怖かった。欲で繋ぎ止められた関係だとしても....誰かに必要とされないことが...自分の居場所が無くなることが...」


「 ...........怖かったんだ...あんたに...Aに見放されることが.... 」




肩に感じる雫。
声を詰まらせるけれど、しっかりとした言葉はとても落ち着いている。




「 最初は鬱陶しかった。どうせ他の奴らみたいに中途半端に自分の正義感を押し付けて、途中で逃げ出す奴だろうって 」

「 ....毎日毎日神威さん神威さんって....馬鹿正直に俺を心配してさ...... その真っ直ぐな瞳が俺を見詰める度に自分の汚さを突き付けられているみたいで苦しかったのに.....気付いたらあんたの顔を見れる唯一の朝のあの時間が待ち遠しくなって 」




私を捉える青い瞳。
その澄んだ青は純粋無垢で、生まれたてのように綺麗に揺れる。



「 痛い時は痛いと言っていいんです。悲しい時は笑わなくていいんです。今まで我慢してきた分、どうか貴方の人生を生きて...。ほら、私の目を見てください。青く澄んだ瞳が映っているでしょう?」



「 神威さんは相変わらず綺麗ですね 」





外はすっかり雨は止み、
遠くの空に虹がかかる。





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S(プロフ) - めちゃんこ好きです!更新待ってます! (8月11日 14時) (レス) @page37 id: cc16e6db3c (このIDを非表示/違反報告)
春風 - 更新ありがとうございます!とっても嬉しいです!これからも楽しみにしています! (2022年11月30日 15時) (レス) id: 1ece860df7 (このIDを非表示/違反報告)
ツバサ(プロフ) - 更新待ってました…!すごい嬉しいです!銀さん作家だったんだと驚きでいっぱいです!あと文章の書き方がとてつもなく好きです、ありがとうございます! (2022年11月28日 8時) (レス) id: 1052176700 (このIDを非表示/違反報告)
むぎ - このお話大好きです…!更新待ってます! (2022年4月4日 18時) (レス) @page31 id: fc9ca49c49 (このIDを非表示/違反報告)
- 何回見ても、ストーリー面白いし好きです!更新されること願ってます!!!! (2022年1月6日 23時) (レス) @page31 id: b23a2b20e9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:□白澤□ | 作成日時:2020年12月1日 12時

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