Ep.27 ページ27
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「 これでもお店ではトップなんだよ。VIPな客しか指名できない売れっ子 」
「剃刀で綺麗な肌が痛めつけられていく様に興奮する客もいてさ。悪趣味だろ?でも弄れた性癖の奴に限って金持ちが多いんだ。そして俺は生まれつき傷の治りが早いこの上ない人材 」
口を開かない私に、神威さんはにこにこと話し続ける。
「 汚い?気持ち悪い?幻滅した?俺はただの金持ち共の玩具。アイツらの気まぐれでいつ命を落としてもおかしくはない無価値で汚れた存在。 」
淡々と話していくけれど、決して冗談ではない。
目の前にいる私がいつもの客に見えるのか。微かに震えるその体を、静かに抱き締めた。
「 なに?慰めのつもり? 」
強ばる体に更に力は込められ、鋭い声で私を払おうとする。
「 別に慰めようなんて同情の気持ち欠片もありません。...でも、慣れてたって体に異常がなくたって、痛いものは痛い。中々耐えられるものじゃありません」
「今までよく頑張りましたね」
優しく摩る背中も指先を無数の傷が触れる。
「 子供扱いすんなよ。俺は...ただ金が欲しいだけ。...頑張ったとか一番嫌いな言葉なんだけど 」
「 どうしてそうやって自分自身を突き放すんです?神威さんの努力は神威さんが一番わかっていることじゃないですか 」
「 人は人、貴方は貴方。何ひとつ同じところは無いのにどうやって比べようって言うんです?どちらにどれだけ価値があるなんて決めようが無いでしょう 」
優しい人。
あんなことをしたけれど、私が抵抗した瞬間すぐに力を緩めた。今だって神威さんの力なら私程度どうにだってできる筈。
シェアハウスに来てまだ不安だけが頭を埋めつくし一睡も出来なかったあの日。
"ご飯はそこに入ってるからとっておいで"
当たり前のように食卓に入れてくれたのは誰だったか。彼にとっては小さな事でも、私にとっては何物にも変え難い。
「 ....なんであんたが泣いてんの 」
「 .....怒ってるんです...」
次第にしゃくり上げ、溢れる涙に声が詰まる。
そんな私の顔を覗き込む神威さん。でも溢れた涙が止まらない。
「 どれだけ心配したと思ってるんですか....毎日毎日、貴方の安否がわからなくて...やっと会えたと思えば...こんなに傷を...帰りを待つ身にもなってください.. 」
小さく息を飲む音と共に、その瞳が揺れ動く。
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S(プロフ) - めちゃんこ好きです!更新待ってます! (8月11日 14時) (レス) @page37 id: cc16e6db3c (このIDを非表示/違反報告)
春風 - 更新ありがとうございます!とっても嬉しいです!これからも楽しみにしています! (2022年11月30日 15時) (レス) id: 1ece860df7 (このIDを非表示/違反報告)
ツバサ(プロフ) - 更新待ってました…!すごい嬉しいです!銀さん作家だったんだと驚きでいっぱいです!あと文章の書き方がとてつもなく好きです、ありがとうございます! (2022年11月28日 8時) (レス) id: 1052176700 (このIDを非表示/違反報告)
むぎ - このお話大好きです…!更新待ってます! (2022年4月4日 18時) (レス) @page31 id: fc9ca49c49 (このIDを非表示/違反報告)
粥 - 何回見ても、ストーリー面白いし好きです!更新されること願ってます!!!! (2022年1月6日 23時) (レス) @page31 id: b23a2b20e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:□白澤□ | 作成日時:2020年12月1日 12時