Ep.21 ページ21
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「 高杉さんって不器用なのかデリカシーが無いのかよく分からないわ... 」
「 ただの無神経なんだろ。アイツと真っ向から話そうとする奴なんていねぇよ 」
初めてきちんと高杉さんと話したものだから、つい買い出しの時間が遅れてしまう。
しかし、この人から無神経なんて言葉が出てくるとは...
どの口が言っているのかと隣を歩く総悟君を見上げれば、他人事のように飄々としていた。
「 まぁ..あの外見なら何もしなくても女の子は寄ってくるのか.. 」
謎に顔面偏差値の高いあのシェアハウスに住んでいると無駄に落ち込むことがある。
ここ何か月の間で毎月のように女の子を連れ込む輩が若干名いるし。
人生とは残酷なものだ。
「 総悟君も黙ってればモテそうよねー...好きな子とかいないの? 」
「 ッ、はぁ!?」
半ばやけくそになって適当な質問を投げれば、いつにも無く取り繕った様子。
「 べ、つにお前に関係ねーだろ! 」
珍しく赤くした顔に、若さを感じる。
生意気だけどやっぱり青春真っ盛りの高校生。
「 意外としっかりしてるよね総悟君は 」
「 もう高3だぞ。あいつらと一緒にすんな 」
あいつらと言われ浮かぶのはシェアハウスの成人済みのあいつら。
何歳も年下に見下される彼らに苦笑いが漏れる。
「 そう言えば進路は決まった? 」
「 警官 」
受験期の、この多感な時期の学生にする質問ではないと思うが気になってしまったものは仕方が無い。
そんな気遣いとは裏腹に間髪入れず答える総悟君。
「 総悟君が警察官か...ハハッ..世も末 」
「 てめぇ...俺が警官になった暁には職権濫用してでも牢にぶち込んでやるからな.. 」
「冗談よ」と笑えば不服そうな顔。
いつの間にかこんなことも言い合う仲になったが、徐に今度は総悟君が口を開いた。
「 お前は言わないんだな。"勿体ない"って 」
真選高校は国内でも有数の進学校。
難関国立大学の登竜門とも言われ、ほとんどの卒業生が国内外の有名大学に進学するだろう。
「 価値観なんて十人十色。勿体ないかどうかなんて総悟君が判断するものじゃない」
一瞬見張るその瞳は、私の言葉を捉えると次第に細められて。
「 お前はそう言うと思った 」
くしゃっと笑う顔。
いつもの大人びた表情とは一変、その笑顔は無邪気さと純粋さだけ。
初めて見る表情に惹き込まれそうにいれば、私の買い物袋を奪い取って。
「 なに見てんだよ、置いてくぞ 」
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S(プロフ) - めちゃんこ好きです!更新待ってます! (8月11日 14時) (レス) @page37 id: cc16e6db3c (このIDを非表示/違反報告)
春風 - 更新ありがとうございます!とっても嬉しいです!これからも楽しみにしています! (2022年11月30日 15時) (レス) id: 1ece860df7 (このIDを非表示/違反報告)
ツバサ(プロフ) - 更新待ってました…!すごい嬉しいです!銀さん作家だったんだと驚きでいっぱいです!あと文章の書き方がとてつもなく好きです、ありがとうございます! (2022年11月28日 8時) (レス) id: 1052176700 (このIDを非表示/違反報告)
むぎ - このお話大好きです…!更新待ってます! (2022年4月4日 18時) (レス) @page31 id: fc9ca49c49 (このIDを非表示/違反報告)
粥 - 何回見ても、ストーリー面白いし好きです!更新されること願ってます!!!! (2022年1月6日 23時) (レス) @page31 id: b23a2b20e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:□白澤□ | 作成日時:2020年12月1日 12時