貴方を越える【五色工】

5.信頼と絆 ページ5

あの日から…Aさんのことばっかり考えてしまっている。
いつもはしっかりしていて、皆から頼りにされて好かれている姉御肌なのに
牛島さんのこととなると、あんな風に涙を流したりへこんだりするんだな。



「若利くーん！Aちゃんとケンカでもしたの〜？最近喋ってないじゃん！」


天童さんが部活の休憩中、牛島さんに絡んでいる。


「ケンカなどしていない。向こうが話しかけてこないだけだ」


クールに答える牛島さん…
牛島さんは…あの涙の理由なんて分かろうともしないのかな。



「若利くん、ひどーい！
そんなんじゃ、Aちゃん他の男に取られちゃうよ〜？？」



天童さんがふざけてそう言うと、牛島さんは鋭い目つきになった。



「Aが他の男がいいというなら、それまでだ」



…なんて、冷たいんだ。
それでなんで、彼氏なんてやってるんだ。
俺は少し感情的になってしまった。



｢それは、いくらなんでもAさんがかわいそうじゃないですか！｣



皆が憧れて、恐れている牛島さんに…
プライベートなことで意見してしまうなんて。
皆驚いてコッチを見てる。



｢おい五色。口を慎め。牛島さんに失礼だぞ｣



白布さんが飛んできて俺の前に立ちはだかった。



｢五色｣



名前を呼んで、無感情な瞳で俺を見る牛島さんは怖かったけど
目をそらしてたまるか。



｢悪いが俺とAはそんなに脆い関係じゃない。
俺はあいつを信用している｣



きっぱりとそう言った牛島さんを
天童さんも白布さんも感心したように見つめる。
ちくしょう。かなうわけがない。
俺がAさんをかばったりしたって
二人の絆に、勝てるわけなかった。

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