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新一 side.
────上等だぜ、オメーら。
私たちのやり取りに唖然とする中岡さんを後ろで感じながらもボールに足を置く。
またさらに起こった爆発はもう何回目だろうか。
きっと残り1分を切ったことを示すんだろう。
俺はメガネを外すと地面に放っておく。
…ゴールポストは瓦礫で直接狙えねーけど、あのシュートなら。
思い出せ、サッカー教室で教わったあのフリーキックを…!
頭の片隅にあった記憶。
…見えた。
ボールはインフロントに当て…、
蹴ると言うより、擦り上げる感じで…、
───“打つ”!!
「いっけぇぇぇ!!」
「無理だ、あの角度じゃ曲がりきれ…っ、なに!?」
「曲がれぇぇ!!!」
ボールは勢いよく宙を進む。
そして、ギリギリの角度で曲がったボールは、大きく音を立ててゴールポストに当たり、…ゴールを抜けた。
「どうだ…」
ゆっくりと顔を上げて電光掲示板を見ると、残り0.15秒のところで止まっている。
「…はは、」
安堵に体の力が抜けて後ろに座ると、微かに肩を揺らして笑う。
子供たちの喜ぶ声が聞きながらも深く息を吐いた時だった。
「…大したガキだ」
そう呟くように言ったのに中岡さんをじっと見つめると、彼は小さく微笑んだ。
それにつられるようにして頬が緩む。
「11人目のストライカーは、お前だったんだな…───江戸川コナン」
すっかり静かになったスタジアム。
きっとそろそろ警察が到着する頃だろう…と立ち上がった時だった。
『新一っ!!』
俺の名を呼ぶ声がして、その方向に目を向ける。
…まあ、今の俺をそうやって呼ぶやつなんて1人しかいねーけど。
怒られる…と思いきや、Aは立ち上がった俺の方へとゆっくりと歩み寄ってきた。
「……A?」
『……ありがとう、』
今にも消え入りそうな声。
やべ、泣く…と瞬時に思ったけれど、彼女は瞳に溜まった涙を零すことはなかった。
『ボール、届いてよかった…っ』
唇を噛み締めながら、安心したようにそう言うAのことを抱き寄せると頭を撫でてあげる。
「…ああ、ちゃんと届いたよ」
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ぱぴこ(プロフ) - 茜さん» ありがとうございます!!そう言っていただけると嬉しい限りです!!ぜひこれからもよろしくお願いします! (2019年5月23日 20時) (レス) id: 9511f3d914 (このIDを非表示/違反報告)
茜 - おおおお毎回お話が面白すぎて毎日楽しみです!頑張って下さい! (2019年5月22日 18時) (レス) id: fc9bd81442 (このIDを非表示/違反報告)
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