『意識しているのはいつも自分だけだ』と、人は勝手に思い込む ページ15
少し遠くにある街灯に照らされて、銀さんの前髪から滴る雫がほろりと落ちるのが分かる。
私は何も言わずにごみ袋の山から降りて、足元にある傘を手に取った。
「私、もうどうすればいいか分からないんです。」
雨音にかき消されそうなほどの小さい呟きは、紛れもない本音だった。
傘で銀さんの顔は見えないし、私の顔も見られてない、と油断していると、
銀さんは傘の唾を手で押し上げて私の顔を覗き込んできた。
「人を突き放してまで独りを望んだヤツがそんなツラするんじゃねーよ。」
そう言うなり私の頭を、大きくて温かい手の平が雑に撫でてきた。
「お前、どうしたらいいか分からないって言ったよな。」
さっきの言葉を私に確かめるように訊ねる銀さん。
「はい。」
「実は俺も分かんねぇ。」
ボケをかましたのかと思うと、
さり気なく私から傘を奪って、相合い傘をするように隣に歩み寄って来た。
急に縮まった距離に鼓動が早まっていく。
顔が見れなくて俯いてしまう。
視界に入らずとも、隣に私より高い肩が並んでいるのを感じる。
「だから、分かんねぇから、もう帰ろーぜ。」
上の方から降ってきた言葉が、まるで魔法のような響きに聞こえて、自然と足が前進し始めた。
まるで私も『帰る』みたいな言い方だったせいで、頭の中で反芻するのを止められなかった。
びちゃびちゃと水っけのある足音を二人で鳴らす。
時々濡れた服や腕の皮膚とが触れて、その度に内心どきりと心臓が飛び跳ねる。
そのまま一言も交わさずに、すぐにあの家に辿り着いた。
(ああ、とうとう来ちゃった。)
木造の階段を軋ませる足音が静けさに響く。
玄関前まで来ると、銀さんは傘を畳んで玄関の戸を開けて中に入った。
靴をまた無造作に脱ぐと、ちょっと待ってろ、と小さく呟いて右側の部屋に行ってしまった。
すぐに出てきたかと思えば、頭に一枚のタオルを被った状態で、両手で端を持ったバスタオルを私の頭上に広げて被せてきた。
わ、と思わず声が漏れる。
「大体拭いたらそのまま風呂に入れ。風邪引いちまうからな。」
髪の毛をタオルでわしゃわしゃと乾かしながら、私にお風呂を譲ってくれた。
「あ、ありがとうございます、すみません...」
小さく頭を下げると、足を拭いて、タオルを取り出した部屋に入った。
扉を閉めて、洗面所兼脱衣所を見渡す。
人の家のお風呂に入るのは随分久しぶりだった。
お人好しもツンデレも、傍から見たら損ばかりしてるように見える→←馬鹿じゃないと上手くいかない事もある
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のと丸(プロフ) - 雪華さん» わー!鋼錬の小説で、コメントして下さった方ですよね!ありがとうございます!(´∀`*)続編というか、新作ですが;; (2019年7月15日 9時) (レス) id: 3187970ecf (このIDを非表示/違反報告)
雪華 - 続編おめでとうございます! (2019年7月15日 8時) (レス) id: 1286db9797 (このIDを非表示/違反報告)
のと丸(プロフ) - みぃさん» 初めまして!コメントありがとうございます!!ご感想とても嬉しく、励みになります!。°(°´∀`°)°。銀魂の小説は初めてなので至らないところがあるかもしれませんが、今後とも楽しんで下さい(´▽`*) (2019年7月13日 16時) (レス) id: 3187970ecf (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 初めましてです!とても面白いです!この作品が大好きです。更新頑張ってください! (2019年7月13日 16時) (レス) id: d77d134be6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:のと丸 | 作成日時:2019年7月10日 22時