対:太宰治異能力者

陸 ページ7

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中原幹部と会ってから、はや数日が経った。
あれから私もマフィアとして色々働いて、疲れ切っている。

そもそもマフィアって云うのは忙しいものなんだ。
中原幹部は五大幹部として大量の仕事がある筈。
なのになんであの人が私如きに時間を割き、話が終わっても飲み合ったりしていたのか。
皆目見当もつかないし、付いたら私は終わりな気がする。


「……で、場所は」


と云う訳で、私は今何をしているかというと。
先日中原幹部に指定された場所に辿り着こうとしている。

着いたのは真っ昼間の河川敷。
ごく普通の、河原の土手だ。
どうしてこんなところで作戦を決行するのだろうか。

マフィア幹部なら、その気になれば探偵社社員の一人や二人、攫ってくるのは余裕なのではないのか。
それが出来ない理由があるのか……。

と、私はそこまで考えたが、背筋を寒気が襲ったのでやめておいた。
生まれついての勘が、やめておけと云っている。


「さて」


私は、深く息を吸った。
幸い付近には誰もいない。


「異能力___『破れ羽織』」


キン、と甲高い音と共に、異能力が発動されたのを実感する。

私の異能力『破れ羽織』は、犬に懐かれる。
唯それだけ、と云って仕舞えばそれまでだが、私は何回かこの異能力で得をしたことがある。

犬と云うのは素直で、比較的云うことを聞き易い種族だ。
だから、懐かれていれば、主人のいない野良犬に限るとは云え、ほぼ使役することが可能になる。

だから今も、横浜を彷徨いていた野良犬が、私の方に走ってきた。
ドーベルマンがいて驚く。雑種はよく見るが、野良のドーベルマンなんて聞いたことがない。これは何かの法律に違反しないのだろうか？

思いつつ、近寄ってきた犬10匹程度をよしよしと撫でる。
親密度は最初から100%なのだから簡単だ。

あとはターゲットが現れるだけ___。


「うぅわ最悪だよ……」


あ、見つけた。


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