対:太宰治異能力者

肆 ページ5

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探偵社とポートマフィア。
二つの組織はヨコハマに存在し、お互いの領分を侵さず、しかし時に対立しながら睨み合ってきた。

お互いの主な構成員は認識しているが、私は新入りだ。
とは云え、太宰治。その名前は有名である。

何故なら、本人が隠れる気がないからだ。
そこら辺の女をナンパする癖があるらしく、ナンパの台詞も個性的な為に「武装探偵社の太宰治」と云う名前はマフィア内外でも知れ渡っている。
出世のため彼を殺そうとしたマフィア構成員も多いらしいが、いつも返り討ちに遭っている。


「えっと、太宰治って、あの太宰治ですよね……？」


一応聞く。
そんな強い(の割に女性に声を掛ける時の口調は軽いらしいが)太宰治に、犬……？
隠語か？ 実は「犬」が暗殺部隊の可能性あるか……？


「はは」

「ん？」


考え込んでいる私に、幹部がまた笑った。
くくく、と笑いを堪えられない様子なので、訳がわからない。
仕方ないので取り敢えず高級そうな料理を一口食べた。

途轍もなく美味しい。
ふわ……と宇宙状態になっていると、中原幹部の笑いが収まった。


「手前面白いな」


おもしれー女認定ありがとうございます。


「他の太宰治がいれば教えてほしいモンだが」

「あの太宰治ですね……はい」

「会ったことあるか？」

「ある訳ないですあんな有名人」


有名人というワードでまた笑い出した。
酒飲んでないのにこんなに笑う？
また料理をいただくことにする。幹部が笑う度に食べることにしよう。
そうなればどんどん笑わせたい。


「まァ確かに有名人だが、彼奴には明確な弱点が有ってな」

「ほう……？」


話の流れから解ってきているが、取り敢えず興味深いという顔をしておく。


「『犬』が苦手なんだよ」


云うと、幹部は料理を摘んだ。
意外と仕草が綺麗だ。


「で、私の異能力を使いたい、と……？」


箸を置き、幹部が頷く。


「手前の異能力は彼奴への嫌がら……攻撃に最適だ」


聞こえたからな。


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