弐 ページ3
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幹部に連れられてきたのは高級そうな旅館だった。
「あの、御飯って聞いたんですけど……」
「嗚呼、合ってるぜ。此処は飯だけもやっててな」
にこ、と笑うお顔も麗しくていらっしゃる。
中に入ると、大和撫子の女将が笑顔で案内してくれた。マフィアとは。
「ぶつかったお詫びで此れは……」
ちょっとお釣りで借金苦になりそうだ。
そう思いつつ和式の席に着き、正座で座る。ロングスカートで良かった。
「俺は詫びに金は惜しまない方だ」
「左様で」
向かいに座った幹部は、私の心中を察したかのように云った。
全く、今朝はこんなことになるとは思っていなかった。
いつも通り晩御飯は適当に済ませようと思っていたのに、家から一番高級そうな服を引っ張り出す羽目になったのだ。
中原中也。マフィアに五つしかない幹部の席を埋める男。
そんな人と一対一で食事してる、なんて朝の私に云っても信じないだろう。
そう考えているうち、幹部が私のことをじっと見つめていることに気がついた。
「あの……?」
黙って見られている訳にもいかない。
若干迷惑そうに日本人らしく云うと、幹部は
「嗚呼済まねェ。手前の顔をリストから探してた」
殺すリストか?
「安心しろ。唯の構成員リストだ」
「顔に出てました?」
「諜報員にゃ向かねェな」
遠回しに私を揶揄うと、年相応の笑みが溢れた。
「あの」
なんだか雰囲気が和らいだところで、私はついに切り出した。料理を運ぶ女中さんが部屋から出て行ったところで、沈黙はある意味話し出すにはちょうどよかった。
「幹部、私に何か特別な御用でしょうか...?」
箸を持っていた手が、ぴたりと止まった。
「その、私は新参ですし、幹部にここまでして頂く身分ではないと云うか...」
幹部の方をちらりと見ると、彼は驚いた顔で固まっていた。
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はつめ(プロフ) - 七巳流さん» ありがとうございます✨ 此方の異能力は璃子様がお考えになりました 🙌 ちゅやも喜ぶ異能ですね 笑笑 (2022年8月3日 15時) (レス) id: 7400ab8132 (このIDを非表示/違反報告)
七巳流 - だざむは犬嫌いだから、そりゃ最高の異能ですよね (2022年8月3日 12時) (レス) @page4 id: 625ec01e21 (このIDを非表示/違反報告)
はつめ(プロフ) - 白樺の木さん» わわ , ありがとうございます 📛💭 笑笑 面白そうでなによりです 🎶 (2022年8月2日 8時) (レス) @page4 id: 7400ab8132 (このIDを非表示/違反報告)
白樺の木(プロフ) - んぉッブフォッ!ンッ ハー 面白すぎるッ 爆笑だわ ヒーヒー言ってたら家族に怪訝な目で見られた。 ( ⚈̥̥̥̥̥́⌢⚈̥̥̥̥̥̀) (2022年8月1日 22時) (レス) @page4 id: 2c86921cab (このIDを非表示/違反報告)
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