前世 零愛 ページ2
わたしは家族の顔を知らない。
そもそもが人間から産まれたのかすら分からない。
自分が何者なのか、目の前の奇怪なアレはなんなのか……全てが分からなかった。
それでもうっすらと、強く私の中にあるソレだけを理解していた。
「ふ〜ん……あんたもあの気持ち悪い奴らが見えるのかい?……親は……まあ、こんなとこにいる辺りそれないかねぇ」
目が覚めて一番最初に会ったのが、眩しく美しいこの女で心底良かったと私は後に思う。
「 ……何してんだい、ついといで」
その女の周りには私がうっすらと認識していたソレをはっきりとしたものにするには充分過ぎるほど材料が揃っていた。
「 あんたほんとに琴の弾き真似をするのが上手いんねぇ……そういや名前付けてなかったわ!う〜ん、、 A、なんてどうだい?」
「……気に入った」
「なんだい、全く生意気だねぇ!誰に似たんだか」
多くの人間からソレを向けられる彼女は無邪気に美しく花のように可憐で、太陽みたいに暖かかった。
「 身請けが決まったよ、これであんたともおさらばだねぇ、せいせいするってもんだよ」
憎まれ口を叩きながらも私も見るその視線はソレで溢れていた。
多分この時だと思う。
目を覚まして長いようで短い年月の中私はソレ以外にも色々なことを覚えたけど、ソレに名前をつけたのこのときだった気がする。
「 ▅▅は身請けなんて嫌なんでしょう?」
「っ!……何言ってんだい、寝言は寝て言うもんさ」
曰く▅▅を身請けするあの方は過去に10人以上も遊女を見受けしてるとか。
曰く▅▅を身請けするあの方の屋敷には無惨な姿の女の霊が出るとか。
曰く▅▅が身請けされるあの方の屋敷には常に女の甲高い悲鳴が木霊してるとか。
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武藤で無糖(プロフ) - みくさん» ヒョエーーー!そう思って頂けて嬉しい限りです。コメント凄いモチベになります!ありがとうございます߹ᯅ߹ (2022年11月8日 14時) (レス) @page28 id: 6b6a37760c (このIDを非表示/違反報告)
みく(プロフ) - ヤバい...物語の進み方が好きすぎる...設定が好き....面白すぎます!夢主ちゃんのこういう感じ、めっちゃ好きです!! (2022年11月7日 20時) (レス) @page7 id: c22457a4d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:武藤で無糖 | 作成日時:2022年10月23日 15時