364話 ページ15
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『……おはよう』
「…おはようじゃない。もう夕方だ」
目が覚めて、俺を覗き込んでいた零さんに開口一番挨拶。
「丸一日寝てたんだぞ。また急に倒れたりして」
こっちの世界では、やはりそういうことになっていたのか。
ということは、精神だけ飛ばされていたか、もしくは全部夢か…。
でも、しっかりと覚えている。
『……景光さんに、会ったんだ』
そう言うと、零さんは目を見開いた。
「…やっぱりか。…うわ言でスコッチって、言ってたから…」
『あとね、バーボンとライにも会ったよ。一緒に仕事したの』
「…マシロ、だな」
『…覚えて…?』
やはりあの出来事は、この世界の過去に起きた出来事で、零さんも覚えているのか…?
「いや…、夢に見たんだ。お前を看病しながら少し仮眠を取ったときに」
夢が、共有されている。
もしかしたら、赤井さんも同じ夢を見たのかもしれない。
薬の効果は、飲んだ本人の精神を過去に飛ばし、それに関わった人達に同じ夢をみせる、といったところか。
どうしてあの時代に飛んだのかは、わからないが。
もしかしたら、俺の望み…だったのかもしれない。
『…楽しかったよ。ライとバーボンは仲が悪いし…、スコッチさんは、ずっと優しかった』
「…ああ、優しいんだよ、あいつは」
そう言う零さんの表情はとても優しくて、景光さんがどれだけ零さんにとって大切な人だったのかが分かる。
『それにしても…昔の零さん…というか、バーボンが冷たすぎて、心が折れるかと思った』
茶化すようにそう言うと、零さんは目をぱちくりとしたあと、少しだけ慌てた。
「…警戒するのは当たり前だろ…。お前だって、潜入中知らない誰かが急に現れて家にいたら警戒するだろ…」
『…はは、確かに』
ひたりと、零さんの手が俺の額に触れた。
「…熱は下がったな。食欲は?」
『お腹空いた』
「ん。何か作るよ」
ぽんぽんと頭を撫でたあと、零さんは寝室を出て行った。
夢にしてはしっかりと残っている引き金を引いた感触に、ぎゅっと掌を握り締める。
この先、何があったとしても…。
再びこの手を血に染めることがあったとしても。
俺は零さんを守る。
景光さんとの約束を、守る。
『見守っていてね…、景光さん』
小さな呟きが、天井に溶けて消えた。
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096 - 柳さん» いえいえ!こちらこそありがとうございました!これからもよろしくお願いします! (2019年7月13日 14時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
柳(プロフ) - 096さん» なるほど、説明ありがとうございました!これからも頑張ってください (2019年7月12日 6時) (レス) id: 6c07f7b951 (このIDを非表示/違反報告)
096 - 柳さん» 現生は、少し乱暴な現金の類語で、生の現金という意味です…!紛らわしい書き方をして申し訳ありません…!ご意見ありがとうございます! (2019年7月11日 22時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
柳(プロフ) - 397話の「い、一回払い…しかも現生かい…」のところ、「現金」ではないでしょうか…?間違っていたら申し訳ございません (2019年7月10日 23時) (レス) id: 6c07f7b951 (このIDを非表示/違反報告)
096 - 花奏さん» コメントとお祝いのお言葉ありがとうございます!内容をお褒め頂き、とても嬉しいです…!!お気遣いもありがとうございます!これからも頑張りますので、よろしくお願いします! (2019年7月6日 21時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:096 | 作成日時:2019年6月16日 21時