116、虚偽に真実を混ぜて ページ36
【no side】
セイと名乗った男はソフィアがサイズを測るために奥へいったのを見ると、懐から携帯を取り出して無造作に電話帳を開くと通話ボタンを押した。
3コール目で出た相手に遅いよ、と笑う笑顔は、確かに先程と同じ笑顔であるはずなのに無機質だ。
”ちゃんとパートナー役は見つけたのかよ?”
「うん、見つけたよ。それもとびっきり美人な女」
”おー。良かったじゃねぇか、これでお前の仕事も楽になるな”
「全くだよ〜」
通話口から微かに聞こえる相手の声は粗野で低い。到底富豪が連絡を取りたがるような相手ではないことは確かだ。
「出費も少しで済みそうだし、本当に良かった。中々頭の良さそうな女だしね」
”あ? 盗めば良いじゃねぇか。ってか頭良いって大丈夫なのかそれ”
「平気だと思うよ、こっちが逆に心配になるくらい危機感なさすぎるし。あ、でも絶してるアイツの気配には気付いたよ。纏は薄すぎるし、戦闘力はなさそうだけどね」
チラリとショーウィンドウになっている所から外を見れば、建物の影に紛れるようにして立っていた男がセイを強く睨んだ。
軽く視線を受け流し、あいつはあの仕事も女も気に入ってなさそうだね、とセイが笑う。
「念能力っぽいの見たけど、回復特化だと思うんだよね。怪我してたんだけどさ、纏が少し揺らいだと思ったら傷口が急速に治ったんだ」
”団長が気に入りそうだな”
「そうなんだよ。で、更に朗報。ソフィアって名覚えてる?」
”女だろ、団長が欲しがってた……って、おいまさか”
通話の向こうの声に、セイはイタズラが成功した子供のような笑みを浮かべる。
「そのまさかさ。瞳はちょっと違うけどほぼ100パー同一人物。偶然バッタリ見かけちゃってね、声をかけたらパートナー役してもらえるって」
本当に奇跡的な偶然だ。セイの仲間がパートナー役を断ったり、此処にいなかったりしたからこそ出会えたのだから。
”思わぬ収穫ってやつだな。仕事が終わったら連れて帰んのか?”
「勿論。だから車は予定通りよろしく、言っとくけど喋っちゃダメだよ。フィンクスは敬語苦手だろ」
”わーってるよ”
店員が戻ってくる気配を感知して、それじゃあね、と電話を切る。
そう、彼は根本を偽っている。
一部は真実だ。彼の名前の一部はセイとついているし、お忍びでもある。偽りなのは他の部分だけ。
彼は富豪でもなんでもない。招待だってされていない。
招待状はこれから盗むのだ──だって彼は、盗賊だから。
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クロ(プロフ) - ユウさん» ユウさん、閲覧ありがとうございます!わあああ面白いの言葉を頂けるとは!めっちゃ嬉しいです! オチはまだアンケート中ですので是非楽しみに待っててください! (2019年6月1日 7時) (レス) id: dcc16283b8 (このIDを非表示/違反報告)
ユウ(プロフ) - ヒソカ、イルミ、フェイタンが好きで、ヒソカオチを捜してたどり着きました!面白いです続きを楽しみにしてます。 (2019年6月1日 2時) (レス) id: 0277b1537e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロ | 作成日時:2019年5月18日 18時