109、意思はどこに ページ29
【ソフィア side】
扉が開く音に、思わず目を見開く。人の気配なんて一切感じなかった。
驚いて視線を扉に向ければ、イルミがこちらを見つめて立っている。様子が変だ……まるで、最終試験の時のキルアのような雰囲気がある。私を見ているのに、見ていないような。
「イルミ?」
「ただいま。まだ寝てなかったんだ」
「え、ええ、寝付けなくて」
というよりは体が熱くて頭がくわんくわんするから眠れなかっただけだけど、そう答える。
イルミはそう、と呟いて、ベッドに近付いてきた。片足を乗せ、乗り出すようにして覆い被さってくる。今度はどうしたのだろう、そう思って見上げると同時に。
「かっ、ぁ……!」
強い殺気と共に喉をイルミの手に掴まれ、圧迫される。本気に近い力でやっているのか、息をすることも声を出すことも出来ない。
(どうしたのかしら)
問いかけることは出来ず、思考を回す。少しでも抵抗しようと腕を掴んでるけど、毒が治りきってないのも相まって効果はあまりない。
おかしい。イルミなら首を折れるはず。殺す気があるなら絞めるのではなく、首を折ればいいのに。
ぶつりという音がしたのを考えるに、食い込んだ爪が首の皮膚を破ったようだ。首を絞めていない方の手が肉体操作され、手刀の形を取ったのが視界の端に見えた。
(──)
ぽたりと、頬に何かが落ちる。回る視界の中でイルミが無表情のまま涙を流していた。何も感情は読み取れないけれど、直感した。
イルミの意思じゃない。なら、意識を失わないようにしないと。意識を失えば、私は人間としての私の意識がないままに獣の力を使うことになる。
意識がない状態に自動発動する獣性と、意識がある状態で獣性を使うのでは違いがある。
後者の状態では私の意識があるから記憶も残って判断も手加減もできるけど、前者の状態で発動すると次に眠って起きるまで意識も記憶もない無意識状態になる。
攻撃に対して防御をとるならまだいい。だけど、敵ならば無差別に殺してしまう可能性がある。
イルミの手刀が腹を貫いたと同時に、獣性を発動する──腕を掴んで片手だけでイルミを投げ、走って扉から出る。強引に投げたせいか腹と首の傷が広がったけど仕方がない。
制限を外したのは、身体能力を強化する力。獣性さえ発動していれば腹や首、毒の治癒速度も早くなるからちょうどいい。走りながら治そう。
私の背中をイルミの殺気が追う。足音はしないが、追ってきているらしい。
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クロ(プロフ) - ユウさん» ユウさん、閲覧ありがとうございます!わあああ面白いの言葉を頂けるとは!めっちゃ嬉しいです! オチはまだアンケート中ですので是非楽しみに待っててください! (2019年6月1日 7時) (レス) id: dcc16283b8 (このIDを非表示/違反報告)
ユウ(プロフ) - ヒソカ、イルミ、フェイタンが好きで、ヒソカオチを捜してたどり着きました!面白いです続きを楽しみにしてます。 (2019年6月1日 2時) (レス) id: 0277b1537e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロ | 作成日時:2019年5月18日 18時