105、大切な人 ページ25
「イルミが作ってくれたから」
「……オレが作ったから?」
「ええ」
ゆるりと頷けばイルミは目を瞬いた。覆い被さった体勢のまま、またも首を傾げる。
「なんでオレが作ったのが我慢する理由になるの?」
「貴方は私が毒に慣れてないことを知ってるし、だからこそ別で作るんだとも聞いた。貴方が嘘をつかないのはわかってるから」
「嘘だったかもしれないよね」
スッとイルミが目を細める。見極めるような、探るような瞳。
やはり兄弟、彼の弟たちと同じ目をする。幾度も温度の似た目で見られてもう慣れてしまった。元より自分の行動や感情を見透かされたところで悪意は持っていない。
「無いわね。私に毒を飲ませてメリットは……あ、そういえば私の能力は知られたわね……」
考え込めば、やっぱりと言いたげに睨まれた。慌てて否定しようと首を振れば、くわりと視界が歪む。イルミも気付いたらしくはっと眉を上げていて、額にひんやりとした大きな手が乗せられた。
熱に浮かされた頭にはちょうどいい気持ちよさだ。ほうと息をつけば、彼の指先がピクリと動いた。
「ありがとう、少しだけ楽になった……。あのね、イルミは大切な人だから、貴方が気遣って作ってくれた料理だったから食べたかったのよ。嘘じゃないことは知ってたもの」
「……!」
息を呑んで、バッと大袈裟な挙動でイルミが離れる。それでも此方に負担をかけない動きだったのが本当に流石というか。
離れて、疑うようにじっと見つめられた。もしかして、信じてもらえてない?
「本心よ?」
「違う。それはわかったから。……大切な人ってどういうこと」
「イルミは私の大切な友人。勿論ヒソカもね」
今度は驚愕からかイルミの眉が寄った。その口が何かを言おうと動いたが、言葉が発せられる前に部屋に響いたノックが遮った。
「なに」
扉の開く音がした。気配が一つ部屋に入ってきて止まったのを感じる。仰向けになっているから私からは見えないけれど、多分執事の誰かだ。
「イルミ様、当主様とゼノ様がお呼びです」
「親父が? 仕事から帰ってきたの? 早いね、何かあったっけ。こっちも話があるからちょうどいいけど。わかった、下がって。この部屋誰も入れないでね」
執事の気配が部屋から出ていった。どうやらイルミのお父さんとお祖父さんが呼んでいるらしい。
「いってくるけど、その前に訂正。ヒソカと同列にしないで、あと友人でもない。オレはソフィアを嫁にしたいんだから」
93人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「HUNTER×HUNTER」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
クロ(プロフ) - ユウさん» ユウさん、閲覧ありがとうございます!わあああ面白いの言葉を頂けるとは!めっちゃ嬉しいです! オチはまだアンケート中ですので是非楽しみに待っててください! (2019年6月1日 7時) (レス) id: dcc16283b8 (このIDを非表示/違反報告)
ユウ(プロフ) - ヒソカ、イルミ、フェイタンが好きで、ヒソカオチを捜してたどり着きました!面白いです続きを楽しみにしてます。 (2019年6月1日 2時) (レス) id: 0277b1537e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:クロ | 作成日時:2019年5月18日 18時