102、あの時と同じ ページ22
「イルミ様、ソフィア様をお部屋にお連れしますのでお食事をどうぞお続けください」
さっき遠ざけた執事が傍までやってくる。ソフィアを抱き抱えようと伸ばしてくるその手に、思わずじりっと身を引いた。
「いい。オレが運ぶから。食事はソフィアの部屋に運んで、あと解毒剤持ってきて」
「は……畏まりました」
渡したくない一心でソフィアの体を自分の体に寄せれば、執事は戸惑いを押し隠して一礼した。
横抱きにして立ち上がる動作に彼女が息を詰めたのを感じとり、極力負担をかけないように抱え直す。
「母さん、ソフィアの部屋にいるから何かあったら執事寄越して」
「ええ、そのように」
弟たちの強い視線を無視して、さっと扉を抜け食堂を後にする。早く楽な体勢にしてやらないと、過剰摂取した状態ではかなり辛いはずだ。
「ソフィア」
「……、」
「なんで、言わなかったの」
オレが毒を仕込んだと思った?なわけない。ちゃんと食事を別にする旨は伝えていた。
今聞くことじゃないのはわかってる。ソフィアは今オレの言葉を聞き取ることもままならない半昏睡状態にあるはずだ。
暗い廊下がハンター試験の時を思い出させ、あの時とは違う点に酷く気が滅入った。
あの時はソフィアが身代わりの時計を選んだせいだけど、今回は完全にオレの不注意だ。彼女の能力が毒に作用するのかもわからない。
三次試験の時の毒はなんだったか。吐き出した血の色が鮮やかだったから呼吸器系がやられてたんだろうけど。後遺症もなく回復したのを考えれば、作用はするのかもしれない。
早く毒に慣れてもらわないと。
(慣らしてほしくない)
毒食の訓練は徐々に慣らすためとはいえ幾度も体調を崩す。その上、完全に耐性がつくまでは慣らしたからといって症状がなくなる訳じゃない。
症状が出ても動けるように訓練するためのものでもある。
この家に嫁ぐためには当たり前で仕方のないこと。なのに、受け入れがたい。
きっとオレに言わなかったみたいに、ソフィアは自分の状態を隠す。今日ですら倒れるまで気付けなかったのに、その時オレは気付ける?
何より、体調を崩し続けるソフィアに普段通り接することができる?
(キルに対してもこんなこと思わなかったのに)
解毒剤と食事を用意してきた執事に扉を開けてもらい、ソフィアをベッドに寝かせる。
うっすらと開いた目から覗く瞳は苦しげで、オレにはないはずの心が軋んだ。
93人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「HUNTER×HUNTER」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
クロ(プロフ) - ユウさん» ユウさん、閲覧ありがとうございます!わあああ面白いの言葉を頂けるとは!めっちゃ嬉しいです! オチはまだアンケート中ですので是非楽しみに待っててください! (2019年6月1日 7時) (レス) id: dcc16283b8 (このIDを非表示/違反報告)
ユウ(プロフ) - ヒソカ、イルミ、フェイタンが好きで、ヒソカオチを捜してたどり着きました!面白いです続きを楽しみにしてます。 (2019年6月1日 2時) (レス) id: 0277b1537e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:クロ | 作成日時:2019年5月18日 18時