100、暗殺一家との夕食 ページ20
なんだかんだいって、どれだけ苦手でも過ぎ去ればなんてことはなくて。
ドライヤーの熱が籠る頭を軽く振って熱を逃がすと、私は使用人の後を追って食堂に足を踏み入れた。
ちなみに現在は、Aラインの黒いシフォンドレスというものを着て、紫のパンプスを履いている。
靴のサイズぴったりなことにびっくりしたけれど、これも将来嫁になる人のために用意したらしいのだと聞けば少し納得した。ドレスは少しゆったりしていたため、黒いリボンを腰に巻いて布を絞ってもらっている。
「まあ、ソフィアさん! 素敵だわ、とてもよく似合っていてよ」
「ありがとう、……キキョウさん?」
使用人に席まで案内してもらって、座る。お礼を言おうとするも彼女はすぐに離れていってしまった。
「まあまあ、私のことはお母様と呼んでも結構ですのよ」
期待の込められた声で言われると断るのが申し訳なくなってくる。
此処にいる以上は嫁候補と言われてしまったし、それならば大人しく彼女の言葉に従う方が良いかもしれない。
「では……此処に居る間はお母様と呼ばせていただくわね」
「……まあ、まあっ! 娘ができたようで嬉しいわ!」
感激を全身で表すかの如く身悶えるキキョウ。それを見てか、食堂に入ったときから固まっていた体型の立派な人がはっと意識を取り戻したように動き出した。
「ママ、彼女がさっき言ってたイル兄の嫁候補?」
「そうよ、ミルキ。美しい方でしょう、ソフィアさんと言うのよ」
カルトの向かいに座る彼はミルキという名前らしい。じっと探るような視線を受ける。
にっこりと笑みを向ければ、ミルキは一瞬で赤くなって目を逸らしてしまった。
「なに愛想振り撒いてるの」
私の料理を持ってきたイルミが此方を見下ろして言う。目を伏せているからか、どこか拗ねているようにも見えた。
「お世話になってる家の家族なのだから愛想良くするのは当然でしょう?」
「ソフィアの場合誰に対しても愛想良いでしょ。どうぞ、食べて」
「ありがとう。頂くわ」
フォークを手に取り、パスタを食べ始める。途端に、くわんと目の前が歪んだ。
味に問題はない。無味無臭の毒?
いや、それはない。そもそも、私の料理だけ別に作る理由は毒の耐性がないからだとお風呂に入る前にイルミから聞いた。
ならば、故意ではないのだろう。心配はかけたくないし、悟られないように食べ終えよう。
折角イルミが気遣ってわざわざ作ってくれたのに、無駄にしたくはないもの。
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クロ(プロフ) - ユウさん» ユウさん、閲覧ありがとうございます!わあああ面白いの言葉を頂けるとは!めっちゃ嬉しいです! オチはまだアンケート中ですので是非楽しみに待っててください! (2019年6月1日 7時) (レス) id: dcc16283b8 (このIDを非表示/違反報告)
ユウ(プロフ) - ヒソカ、イルミ、フェイタンが好きで、ヒソカオチを捜してたどり着きました!面白いです続きを楽しみにしてます。 (2019年6月1日 2時) (レス) id: 0277b1537e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロ | 作成日時:2019年5月18日 18時