接触 ページ21
(…しょうがない…帰ってきたらまた声かけよう)
はあ…とため息を吐いて引き返そうとした時、目の前の方舟から出てくる影が見えた。
ラ「…あ、やっぱり」
『えっ』
ラ「…なんか声が聞こえた気がしてさ。…呼んだ?」
『…う、うん…』
予想外の出来事に、普段は落ち着いている彼女も動揺を隠せず、思わず俯いてしまう。
どう話を切り出そうか…と黙ってしまっていると、ラビが無言のままでAの右手を掴んだ。
『!?』
驚く彼女をよそに、彼はその右手に無理やり何かを握らせた。
ラ「…まさか、そっちから声をかけてくれるなんてな、予想外だったさ。…ま、俺は任務行ってくるさ」
『う、うん…行って、らっしゃい…』
突然の行動についていけていない頭のまま、力なく彼女がそう返すと、ラビは微かに笑ったまま、再び方舟へと入っていった。
『……び、びっくりしたあ…』
ーー結局、喧嘩については何一つ話せなかったものの、ラビと接触は出来たわけで。
心のどこかで安心している自分がいた。
ふと思い出し、何かを託された右手を目の前に出してみる。
その手を開くと、中には小さく折りたたまれた紙が入っていた。
『…?なんだろう…』
その紙を広げると、走り書きでこう書かれていた。
"ちゃんと2人で話がしたい。"
"Aちゃんが余裕がある時でいいから、必ず話そう。"
『…ラビ、くん…』
ーー無視し続けるという酷い対応をしていたにも関わらず、彼が「話そう」と言ってくれたことに涙が出そうになった。
(もっと…早く私が答えていれば…こんなに長引いちゃうこともなかったんだよね…)
『…ううん、今は前のことを考えてる場合じゃないんだ!』
両頬を手のひらでパンパンと軽く叩いてやる。
(…ちゃんと向き合うって決めたんだ。…ずっとラビくんに伝えたかったことだってあるんだし…)
『…今は、ラビくんが帰ってくるのを待っていなきゃね。』
ーー彼女の表情がいつも通りの笑顔に戻ったのは、ラビと喧嘩して以来、この時が初めてであった。
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みれい(プロフ) - すごく面白いです!アレン推しなので、アレン落ちの小説が少ないのですが、その中でもめちゃくちゃ好きです!更新楽しみにしてます! (2020年2月22日 16時) (レス) id: b87f86880a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナジカ | 作成日時:2018年1月31日 22時