episode6 ページ8
・
「お気に召してもらえたかい?」
その言葉にハッとして顔を上げれば、得意げに笑う太宰さん
しまったーー
餌に釣られたと気付いた時には遅すぎた
太宰さんは我が物顔で棚からファイルを物色し始める
“其れを渡すから私の邪魔はするな”
つまりはそういうことだろう
『わかりました、今回だけは見逃します』
盛大に溜息をついて録音機を自分の上着のポケットに入れる
「理解が早くて助かるよ」
『………』
嵌められたとは云えど、中也さんのお嬢様口調など 滅多に…否、二度と手に入らない代物。
太宰さん捕縛と中也さんの貴重な口調
価値のあるのは何方かなど云うまでもない
「君も上司と同じで組織への忠誠心は高いと思っていたけれど、違ったみたいだね」
『私が忠誠を誓っているのは組織ではなく
「…そうかい。私が嫌う君の唯一の欠点だ」
『素敵な褒め言葉をありがとうございます』
「可愛げがないねぇ、全く」
今度は太宰さんが盛大に溜息をつく番だった
・
・
・
暫く殲滅予定の組織情報を眺め、或る程度の作戦立案が立った処でファイルを棚に戻す
『用が済んだので私はこれで……と云いたい所なんですけど ひとつだけ』
「なんだい?」
未だ目当ての資料を見つけられていないらしく 棚に視線を向けたままの太宰さんが声だけの返事をする
見当違いなファイルばかり開く其の人に 棚の一番端に置かれたファイルを押し付けた
『厄介な敵対組織が増えて大変ですけど お互い夜道には気をつけましょうね。なにせ生き残るのはたったひとつの組織のみ』
自分の身は自分で守らないとですからーー
そう云い残し保管所を出て行く
扉の閉まる後ろで“素直じゃないねぇ”なんて声が聞こえたけれど 聞こえないふりをした
『地下牢からの脱出、出来たばかりの頬の傷、録音機ーーー』
彼の人が帰ってきたことを気づくのに、充分すぎるほどの手がかりだ
そして、そうと分かればする事は只ひとつ。
緩む口元をキュッと締めて
乗り合わせた黒蜥蜴の立原さんがギョッとした目で見てきたけれど、気にしない
寧ろ背中をバシバシ叩いて(勝手に)此の喜びを分かち合った
『無事で安心しましたね』
「エッ…あ、うっす……」
因みに、此の時既に太宰さんとの件は頭の片隅に追いやられていて忘れていた
769人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きなこもち(プロフ) - わたあめさん» ブックマンJr.放置していてすみません。最近自分でも迷走しててどこに突っ走っているのかわからなくなり放置状態にしてました。真逆更新待って下さる方がいるとは思わず・・・。でも、とても嬉しいお言葉です!頑張って今月中に更新します!! (2017年8月17日 7時) (レス) id: d6a64bf75c (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - ごめんなさい!生意気言って,,, (2017年8月16日 21時) (レス) id: 8f5f7e0649 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - ブックマンJrの少女も更新して欲しいです!! (2017年8月16日 21時) (レス) id: 8f5f7e0649 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 赤雲蒼雲さん» 赤雲さん、ありがとうございます!とっても励みになりました!!更新とってもノロノロですが、これからも面白いと思って頂けるよう頑張ります! (2017年4月22日 19時) (レス) id: d6a64bf75c (このIDを非表示/違反報告)
赤雲蒼雲 - 面白かったです!更新頑張ってください! (2017年4月17日 11時) (レス) id: 08e4520087 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きなこもち | 作成日時:2017年1月2日 21時