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episode45 ページ47





「何だ、あれは……」

中原が汚濁を使い、周囲に広がる巨大な圧。
それにより、Q奪還前に中原とAによって撃退されていたジョン・スタインペックが目を覚ます。



「知りたいかい、組合の働き蟻君。あれが中也の異能の本当の姿だよ」

中原を見て驚く彼の首元に、背後から容赦なく短刀を突きつけるのは太宰。
そしてその横で、Aは心配そうに中原を見つめていた。


中原の“汚濁”形態は周囲の重力子を操る。自身の質量密度を増大させ、戦車すらをも素手で砕く。
彼から繰り出される圧縮した重力子弾は凡百質量を飲み込む暗黒空間。
その威力は凄まじく、瞬きした瞬間には化物の体の大半を抉っていく。

その様子を誇らしげな表情で眺める太宰、信じられないという風に目を見開くスタインペック、早く終われと願いながらひたすらに中原の身を案じるA。
三者三様、其々の思いを胸に持ちながらその戦いの行く末を見つめていた。



最初に異変に気づいたのは、Aだった。


『…何故、奴はあれ程の攻撃を受けても倒れないの』

化物──ラヴクラフトは、幾ら中原から攻撃を受けようと、身体を削られようと、瞬時に身体を再生させる。これでは、埒が明かない。


「相棒の君ならあれの正体を知ってるんじゃないかな?」

太宰の問いに、スタインペックはそっけなく「知っていても教える訳ないだろ」と答える。

Aが憎悪に満ちた目でスタインペックを睨むが、彼はさして気にしていないようであった。


「拙いな。中也の躰が保たない」

重力子弾を放ちながら、全身から血を流す中原を見て太宰が少し焦ったように呟く。

『……っ、死にたくなければ答えて。奴はどうしたら殺せるのか』

スタインペックの胸に手を当てて、Aが怒りと焦りと憎悪に満ちた表情で彼を見据える。

『答えなければ、今すぐ貴方を消す』、と云ったAに彼は怯えるでもなく、嘲笑うでもなく、「生憎だけど」と落ち着いた様子で口を開く。

「ああなったラヴクラフトを外部から破壊する手段なんて存在しない」


一見それは“奴を倒すことは不可能”だと聞こえる。



けれど、それは大きな間違い。




スタインペックの発言を聞き、太宰はニヤリと笑って勝利を確信した表情を浮かべ、Aはほっと、安堵の息を漏らす。


そんな二人の様子を見て、更には『ありがとう』と己に微笑むAに、スタインペックは訳がわからぬというように困惑の表情を浮かべていた。

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きなこもち(プロフ) - わたあめさん» ブックマンJr.放置していてすみません。最近自分でも迷走しててどこに突っ走っているのかわからなくなり放置状態にしてました。真逆更新待って下さる方がいるとは思わず・・・。でも、とても嬉しいお言葉です!頑張って今月中に更新します!! (2017年8月17日 7時) (レス) id: d6a64bf75c (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - ごめんなさい!生意気言って,,, (2017年8月16日 21時) (レス) id: 8f5f7e0649 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - ブックマンJrの少女も更新して欲しいです!! (2017年8月16日 21時) (レス) id: 8f5f7e0649 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 赤雲蒼雲さん» 赤雲さん、ありがとうございます!とっても励みになりました!!更新とってもノロノロですが、これからも面白いと思って頂けるよう頑張ります! (2017年4月22日 19時) (レス) id: d6a64bf75c (このIDを非表示/違反報告)
赤雲蒼雲 - 面白かったです!更新頑張ってください! (2017年4月17日 11時) (レス) id: 08e4520087 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこもち | 作成日時:2017年1月2日 21時

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