ン ページ8
「先輩が、あげても困らないほうください」
第二ボタンが欲しいです
そんなことは言えなかった
先輩が、あげてもいい方でいい
「じゃあ、こっち」
先輩が着用したブレザーからボタンを外し、私の手を取る
私の手のひらに、置かれた先輩のボタン
「先輩、意味分かって渡してます?」
もしかしたら、そういうのに疎くてわかっていないで渡しているかもしれない
だって、彼は絶対第三ボタンを選ぶと思ったのに、私の手に置いたのは第二ボタンだった
「わかってるよ」
少し照れくさそうに答えた先輩の顔は、今までに見た事のないもので、胸に槍か何かが刺さったような感覚がする
「黒尾先輩、私の事なんて…」
ただの部活のマネージャー
ただの部活仲間
山本たちと変わらず、ただのかわいい後輩
黒尾先輩にとって私は、大事な後輩の1人
「好きだ、A」
先輩のその言葉に、耳を疑った
好き?
だって、黒尾先輩って、ロングヘアのおとなっぽい女の人がタイプじゃん
比べて私は、ボブカットで子供っぽいし、女の子らしさの欠片もない
「黒尾先輩のタイプと、全然違いますよわたし」
「うん。わかってる。けど、タイプと好きになる人は違うだろ」
「俺は、Aが好きだよ」
ずっと聞いていたい程に低くて、かっこよくて、落ち着く声
その声で放たれた言葉に、抑えていた涙はボロボロと零れた
「わ…わたしも、ずっと、ずっと先輩のこと、好きでした、でも、先輩にとって私はただの後輩だって、そう思ってたから、だから…」
私らしくない、震える声
なんて言っているのか、自分でも分からなくなってきた
自分の気持ちを伝えることが出来たこと、彼の私に対する気持ち
混乱、よろこび
ぐるぐると感情が駆け巡り、頭が痛くなりそうだ
そんな私の体を、先輩は鍛えられた腕で抱きしめた
「かわいい後輩っていうのも変わりないけど、俺はAが想像するよりずっと前から、それ以上の存在だったぜ?」
「俺と付き合ってよ」
fin.
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作者名:むぎ | 作成日時:2024年3月27日 13時