きみの第二ボタン【黒尾鉄朗】 (ページ7)

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タページ7

ああ、行っちゃう

いなくなっちゃう

目尻が、熱くなる

もう、逢えなくなるんだね

当たり前に、毎日部活で会えるのも

バレーしてる姿を見るのも

休日も、部活に打ち込むのも

もう、ない

「A」

「研磨、」

「行ってきなよ。まだ間に合うよ」

研磨に背中を押されるがまま、私は先輩たちを追いかけた

「先輩！」

「A？」

振り返った3人はきょとんとした顔をする

「ちょっと、いいですか。黒尾先輩」

私の言葉に、「え？」と声を漏らす黒尾先輩。夜久先輩と海先輩は、顔を見合わせると少し笑った

「俺ら、校門で待ってるから」

「急がなくて大丈夫だからね」

私の黒尾先輩への気持ちを知っているのは、研磨だけだと思っていたのに

もしかしたら、2人も気づいていて、これから私が黒尾先輩に何を言うのかを察したのかもしれない

「どうした？寂しくなっちゃったか？」

2人が校門の方に行くのを見送りながら、ニヤニヤと胡散臭い笑みを浮かべ、からかうように言う先輩

いつもなら、「どうでしょうね！！」なんて強気な返事をするところを、私は素直に首を縦に振った

「…卒業しちゃ、嫌です」

寂しい

いなくならないでほしい

「なーに？可愛いこと言うじゃねえか〜！まあ、主将とマネージャーで何かと俺ら絡み多かったもんな」

「山本が主将、研磨が副主将。あいつら、心配だからさ。A、頼んだぞ」

その言葉に、無理だと首を横に振った。

今の1、2年に不満があるわけでない。むしろ、大切で大好きな仲間だ

でも、先輩たちがいなくなるなんて、耐えられない

「Aはおてんば娘ですーぐ山本やリエーフと騒ぐからなぁ。…まあでも、Aなら大丈夫だ。2年間、ありがとう」

ぽんぽん、と優しい手つきで、その大きな手で、私の頭を撫でる

「先輩」

熱くなる目尻

油断をすれば、すぐにでも涙が零れそうだ

「先輩のボタン、ほしいです」

モテる先輩は、もしかしたら誰がにあげたかもしれないと思っていた第二ボタン

それどころか、彼のブレザーからはどこのボタンもなくなっていなかった

「どこのボタンが欲しい？」

先輩は、いじわるだ

「こっち？それともこっち？」

第二ボタン、第三ボタンを綺麗な指が往復する