最終楽章 忘れられないアンサンブル ページ13
『今日は本当に、ありがとうございました！！』
結果を言えば、公演は大成功だった。
私自身も、楽しくて時間を忘れてしまったほどだ。
現実味がない。
あのアンコールは夢だったんじゃないかとすら思えてくる。
気がつけばいつもの音楽室で、後輩との別れを惜しんでいた。
……まぁ、それも全て“あの日”の思い出であって、今日は卒業式……本当のお別れの日がやってきたのだ。
後輩たちが演奏する校歌に合わせて私たちも歌う。
あ、やばい、と思った時にはもう遅くて、頬を涙が伝っていっていた。
視界をぼやけさせる涙が邪魔して、みんなの姿が見られないのが惜しい。
ああ、私ここの生徒でよかった。
——ねぇ、きっと同じこと思ってるよね、英智？
同時に行われているであろうアイドル科の卒業式に思いを馳せて、私は校歌を歌い切った。
「Aー！一緒に写真撮ろ！」
「杏奈！うんっ、ちょっと待って〜」
手を振る杏奈の後ろには、吹奏楽部の三年生たち。
みんな泣いてたんだろうな。
「遅いよ、A〜」
「ごめんごめん、じゃ、撮るよ〜？」
早咲きの桜を見上げて、ふ、と笑みを零す。
アイドル科の校門前には、もうすでに英智の姿があった。
「あ〜あ、卒業しちゃった」
「卒業、か……もう、僕たちがこの制服を着ることは無いんだろうね」
「うん。……寂しいなぁ」
空色のブレザーと、緑色のネクタイ。
英智のそれは随分と馴染み深かったから、もう見ることがないというのは不思議な感じがする。
私の制服も、これで着るのは最後。
空色のブレザー、グレーのスカート。
……そして緑のリボン。
しゅるり、とそれを解くと、私はリボンから手を離した。
風に乗って、緩やかに空に舞った緑。
それは、突然吹いた強い風によってあっさり見えなくなった。
——春一番かな。
「A……？」
「だって、もう私には必要ないから」
こちらを覗き込む英智の顔が徐々に柔らかくなっていった。
あんまり見つめるものだから見つめ返すと、思いの外早く逸らされてしまった。
「それじゃあ僕が、Aの分の思い出もこのネクタイに一緒に仕舞っておくとしよう」
そういう詩的なこと、よく恥ずかしがらずに言えるよ……。
まぁ、それが私の双子の弟のいいところなんだけど。
これからもよろしくね、英智。
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ホッチキス(プロフ) - ゆゆゆさん» 本当にラッキー(^_−)−☆ですね！これからも応援しています！ (2022年5月25日 21時) (
レス) id: b36c03acb0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆゆ - ホッチキスさん» ありがとうございます、最高とかめちゃくちゃ嬉しいです…！全然アイドル出てこなかったのに推しが出ていたとはなんとラッキー！！(？)私もニヤニヤが止まりません。こちらにもコメントして下さりありがとうございました！！！ (2022年5月24日 18時) (レス) id: 6c5dc33c86 (このIDを非表示/違反報告)
ホッチキス(プロフ) - 双子設定最高でした！すごく面白かったです！私の推しの渉も出番をいただいて、、、ニヤニヤがとまらないっす！ (2022年5月24日 18時) (レス) @page15 id: b36c03acb0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：箸レーゼ | 作成日時：2022年5月4日 18時
