AU短編集3

＊まりもっこり様リクエスト(旅行3) ページ7

「此処は…」

各々が様々な場所で楽しんでいる中、Aだけは何故だか不思議な表情を浮かべている。此処は初めて来たはず。それなのにもう此処には来ているような感覚。懐かしい感じ。しかしなにかが違う。何が…。考えてはいけないと脳が警告するかのように痛みだす。しかし、知りたいという欲と好奇心には勝てない。気持ちを落ち着かせるように大きく息を吸って吐くと、クリアになった脳でその違和感の原因が分かる。そうだ。昔 は も っ と 静 か だ っ た の に 。

「やっと思い出してきたのか」

その言葉が聞こえた途端、周りが暗くなり目の前に黄金の花が咲き乱れる。

「後少し」

ゆっくりと黄金の花を踏みしめつつ、じわりじわりと影のように真っ黒な者が近寄ってくる。

「もう少しで」

後ろに下がろうと思ったが、身動きがとれない。指一本を動かすことも出来ない。

「やっと彼奴以外が消える」

黒い影のような者は目が黄色く、輪郭は淡く青色に光っている。黒いスケルトンで首には黒いマフラーに黒いスーツ、黒いズボンに黒いブーツと、全身を黒一色で染めている。そんな黒いスケルトンはAに対し不気味な笑みを浮かべている。

「はやく思い出せ、穢れたモンスター殺し」

悪寒を感じた時には、もう元の場所に戻っていた。さっきのは何だったのだろうか。あのスケルトンは何を知っているのか。自分は何をしてしまったのか。

「よぉA、こんな所で何してるんだ？」

暫くその場に突っ立っていたが、sansに名前を呼ばれハッと現実に戻る。

「初めて来た所なので迷子になってしまって」

声を震わせずに嘘をつけた自分に驚きを感じる。まるで自分じゃないかのようだ。

「それならオイラと観光しようぜ、暇でな」

「勿論いいですよ」

ニコニコといつもの笑顔で話すsansを見て、先程のは言わない方が良いのだろうと思い何事もなかったかのように接するA。まさかずっと付けられ、見られていたとは思いもしなかっただろう。

「怪しいな、始末するか？」

「まぁ今回の旅行は様子見でしょ？」

sansと平行しているAの背を睨んでいるmustard。その横ではいつも通りの声で話してはいるが真剣な顔をしているhoney。

「inkが人間が来れないようにしてたんだぞ？」

「まぁ完璧には出来てなかっただけかもしれないじゃん？」

リセットされる前に始末しておきたいmustardと人間を庇うhoney。今回の旅行はどうやらAの様子見もあったようだ。

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