AU短編集3

＊寿命(Flower fell sans) ページ39

泣いている暇なんてない。この間に今まであまり言葉にしてこなかった事を言わないといけない。でないともう伝えることは出来なくなるから。頭ではそう理解しているのに、やはり信じたくないと思っている自分は、ただ弱っている恋人を見てむせび泣いているだけだった。

「sans…貴方の笑顔が見たいわ…」

痛みで身体中蝕まれ喋るのも動くのも辛く苦しい筈なのに、それなのにAは笑顔を絶やさずいつも通りの口調で話している。ただ息は荒く、顔色は死人のようだ。まるであの日花に囲まれ旅立った友のように。あの時、友にはありがとうと伝えることも、短い間ではあったものの一緒に過ごせた時間は幸せだったと伝えることも出来ず後悔してきた。もうそんな後悔をして生きていくのはとてもじゃないが俺には重荷すぎる。

「お前と付き合えるってなった時は何よりも嬉しかった」

「病弱だったお前とはずっと此処でしかいれなかったけど」

「傍にいれるだけで幸せで、話せるだけで満足だった」

「俺と付き合ってくれてありがとう」

「この数年、かけがえのない俺の宝物になった」

「ずっと愛してる…A」

ぼろぼろと大粒の涙が流れ、ひきつった口角と下がりきった目ではとてもじゃないが綺麗な笑顔とは言えない。それでもAは満足そうに笑い、安らかに長い眠りへとついた。









＊何処かで携帯が鳴っている。

「……」

「よぉ、元気か？俺はまぁ、絶好調だぜ」

「口調的には変わってないように聞こえるだろ？これでも結構歳はとってるんだぜ」

「お前がいなくなってから地上はかなり変わったよ」

「人間もモンスターもお互い醜い争いはしなくなった」

「昔よりいい関係を築けている」

「今じゃ人間とモンスターとで結婚をしてる奴がいるんだ」

「それにつれて人間とモンスターのハーフがかなり増えている」

「町中にうじゃうじゃいるぜ」

「スケルトンの子どもは増えてねぇけどな」

「もし、まだお前が俺の隣で生きてたら…」

「俺は絶対プロポーズしてたんだろうな」

「bahehheh、そんなのあり得ないな」

「人間とモンスターじゃ寿命が違うもんな」

「…今日はいい天気だよなぁ」

「鳥歌い…花は咲き乱れる…」

「こんな日に…俺のようなスケルトンは…」

「長旅に出る…日なん…だろうな…」

「ba…hehheh…また会い…てぇなぁ…」

＊何かが舞う音と、かしゃりとぶつけたような音が聞こえる。

＊そして携帯から何かの割れる音が虚しく響いた。

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