フェイクラバーズ…Yuri.C (ページ2)

今日:12 hit、昨日:43 hit、合計:112,139 hit

2 ページ2

『Aさんってさ、大貴のこと好きなの？』

そう言って彼が私に話し掛けてきたのは、何ヶ月か前の話。

人見知り故に、しばらく同じ職場で働いているにも関わらず仕事中以外で話すことのなかった彼に、

突如として今まで誰も気が付きはしなかった事実を指摘され、言葉を失ったことを覚えている。

同時に、その容姿故に客からも人気だった彼の、本性を知ることとなった。

事あるごとに突っかかってきては、
容赦なくからかいの言葉を浴びせてきた。

『ねえ。知念くんってもしかして、店長のこと好きなの？』

そんな彼もまた、きっと伏せ続けてきたのであろう事実を私に突かれて、目を丸くした。

ただ、その時の私はあたかも彼の弱みを握ったつもりになってしまったわけで。

無神経にも、…と言うより、それだけのことをしても許されると思えるほどの被害は被ってきたのだけれど。

とにかく、私もまた、彼に対してかなり考え無しの言葉をぶつけまくったのだ。

そうして、いつしかお互いに気が付いたんだ。

自分の想いが実らないであろうことを。

それを、私たちは双方、
どちらも痛いほどに自覚していたということも。

恐らく、その自覚が事実であるということも。

だから、だったのだろうか。

変な仲間意識が生まれたのかもしれない。

.