page39「暖かい優しさ」 ページ47
ピンポーンと響く午後よりの朝。11時手前の針がチクタクと無情に進むのを体感しながらのそりと重い体を動かした。
動いて、起きて。フローリングに足をつけてから数秒。自身の姿が壁掛けの鏡に写る。そうしてかち合った自分自身の目と目は腫れぼったく赤みを帯びており何かあったというのは丸わかりの酷い有様だった。
「…そんな泣いたっけ」
怪我したことがわかるとその部分が急に痛みをジクジクと刺してくる様に泣いたとわかる瞳は長い瞬き一つでまた眠ってしまいそうな程重く感じだした。そうなれば最後二度寝したい衝動に駆られ、ベッドに戻ろうとする足はあの無機質な音に止められジトリと玄関を睨んだ。
宅配便なら居留守を使おうと誰が来たのかインターフォンの画面を覗く。
「っそらるさん…」
黒に空気を纏いふわふわと揺れる髪をくしゃりと掻き揚げながら画面越しに僕を見据える彼に今僕は合わせる顔が無い。ドッドッドと跳ねる心臓を一撫でし、寝室に置いたスマホを取りに走る。
案の定、というべきか昨日の夜に彼からのメッセージが数件。そして既読をつけて数十秒。どうするべきか悩んでる間に彼は居るのはわかっているとインターフォン越しに伝えてくる様にもう一度鳴らした。
「なんで…っなんで…!」
一つの扉を開ければ見えるであろう話せるであろう彼にあと一歩が進めない。一昨日自分がどれだけ相手を傷つけるような真似をしたかなんて覚えている癖に覚えてないふりをした最低な僕を彼の瞳に移したくない。
ほんとはどうしたか。どうなったか。どうやって別れてどうやって帰ったか。目を瞑れば鮮明に蘇るそれを気付かないフリをして被害者面をして泣いたのは僕なのに。
そうやって零した汚い涙を誰も拾ってくれないのに。
亡くなったあの子が帰ってきてくれる訳でも無いのに。
「見捨ててくださいよ…!突き放して、嫌厭して、憎んで…僕を、許さないで下さいよ…」
取り返しのつかない事を言った。しかも悪意と自覚の両方を持ってして喉から放った言葉を大好きで頼りになる人に武器として向けた。
なのに
【一昨日はごめんな】
【俺がお前をそうさしたんだよな】
【ごめん】
【もう一度
_____話させて】
とめどなく溢れる涙は昨日一昨日と違い少しだけ温かかった。
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雨中と猫。(プロフ) - ちょこさん» うわああああんすみませえええええんがんばります (2022年2月10日 2時) (レス) id: dcb807c257 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます!(´;ω;`) (2021年12月20日 22時) (レス) @page49 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
雨中と猫。(プロフ) - いちごポテトよーぐるとさん» 返信が遅くなりすみません!めちゃくちゃ嬉しいです、現在別作品「笑えないって」リメイク更新中ですのでもう暫くお待ち下さい!! (2021年12月9日 18時) (レス) id: dcb807c257 (このIDを非表示/違反報告)
いちごポテトよーぐると(プロフ) - 色々な感情で涙が……とても面白かったです…。更新待ってます、! (2021年8月17日 0時) (レス) id: 33ba1212be (このIDを非表示/違反報告)
雨中と猫。(プロフ) - 眠夢_さん» うわああああありがとうございます!!今メインで書いている「笑えないって」という小説のリメイクを行っていてそちらが落ち着き次第こちらも更新しようと考えております!絶対完結はさせますので何卒ー!! (2021年8月13日 3時) (レス) id: 6b41ff11b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨中と猫。 | 作成日時:2017年4月29日 2時