page38「後の祭り」 ページ46
「何してんの」
背後から聞こえた低い安心を齎してくれそうな柔らかい青色。画面越しで聞くよりも怒りという感情を含ませた物言いは振り向かずしても誰が言ったのか理解に容易かった
「それはこっちの台詞っすよ」
何よりも純粋で透明で夕暮れが似合う男性。下ネタに大笑いして馬鹿している俺とは全くもって違う世界を全速力で走っているであろう彼はあまり得意ではない
「まふくんに止められなかったんすか?…そらるさん」
鋭い眼光が背中に突き刺さっているのだけは厭にわかったが、なんて返答するかは予想もつかない彼に動揺を悟られぬ様言葉を軽く笑い飛ばした。背中を向けている為相手の表情や仕草は一切読み取れないが俺と一緒に笑い飛ばしてくれる様子は当たり前の様に無いらしい。代わりに「はあ」と溜息が聞こえた
「昨日のまふまふ見てよく聞けたね。…わかってるでしょ、黙って来たの」
案外すんなりと返される問答。第一声が怒っていたに加え眠っている彼女のベッドを蹴る真似をしていたのを確実に彼は見たに関わらず拍子抜けた。
だが刹那。声色は元に戻り一変した
「じゃあ俺の質問にも答えてよ。何してたの?キヨさんは」
前言撤回。俺に敵意むき出しが目に見えたトーンに先程見出せそうだった希望はサラサラと風に流されていった。「何にもしてないっすよ」なんて目に見えた嘘は欲しくないであろう背中越しの彼に何を言おうと考えて数秒すれば彼は「じゃあ言い方変えるね」と助け船の様な有難迷惑の様な言葉を乗せてくれる
「…Aにこれから何するつもり?」
どこまで見据えられているのか。どこまで知っているのか。その一言で一気に形勢が不利になった気さえする。まふくんがそらるさんは勘が鋭いと言っていたのを鵜呑みにすればよかったとこちらの情報不足があだになっているのを痛感する
「何するも何も彼女が起きなければ俺は何も出来ませんよ」
手一杯の反撃がたったその一声だけであった。正論であり認めざるを得なく、納得せざる得ない。やっと振り向いた俺の視界に映ったそらるさんの姿は冷え切った眼光で不愉快そうに俺を見ていた様子だった
「へえ、そう」
怪訝な顔に変わりはなかったが言葉だけ聞くと納得した様に受け取れる物言いの彼はそれだけ言い残し病室を後にした
なんだったんだと思うのも束の間、自分が失態を犯した事に気付いた
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雨中と猫。(プロフ) - ちょこさん» うわああああんすみませえええええんがんばります (2022年2月10日 2時) (レス) id: dcb807c257 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます!(´;ω;`) (2021年12月20日 22時) (レス) @page49 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
雨中と猫。(プロフ) - いちごポテトよーぐるとさん» 返信が遅くなりすみません!めちゃくちゃ嬉しいです、現在別作品「笑えないって」リメイク更新中ですのでもう暫くお待ち下さい!! (2021年12月9日 18時) (レス) id: dcb807c257 (このIDを非表示/違反報告)
いちごポテトよーぐると(プロフ) - 色々な感情で涙が……とても面白かったです…。更新待ってます、! (2021年8月17日 0時) (レス) id: 33ba1212be (このIDを非表示/違反報告)
雨中と猫。(プロフ) - 眠夢_さん» うわああああありがとうございます!!今メインで書いている「笑えないって」という小説のリメイクを行っていてそちらが落ち着き次第こちらも更新しようと考えております!絶対完結はさせますので何卒ー!! (2021年8月13日 3時) (レス) id: 6b41ff11b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨中と猫。 | 作成日時:2017年4月29日 2時