page35「お見舞い」 ページ43
夜、深夜くらいだろうか。電気を消した病室の夜は暗く、日が沈んでしまえば時計の針が何処を指しているかなんてわからない
明日話される自身の過去に胸を踊らせていると小さい子供に返った様に眠りにつくのは難しかった
だが寝れない理由はそれだけでは無くどうにも今日の病院の廊下は騒がしい。面会の時間はとっくに過ぎているし聞こえるのは世間話の類では無い
まさか幽霊、と一瞬だけ発想も子供に逆上りしたがバタバタ走る音と声は到底そう断定するには不可思議だった
患者に何かあったんだろうと言うのは想像に容易かったが嫌に胸がざわめき落ち着かない
記憶を失くした手前、その胸の衝動は何か欠けたピースを取り戻そうとしているのでは無いかという発想が自身の中には少なからずあった
だから不謹慎かも知れないがのそりと動き出し騒がしい原因となる元へと足を踏み出した
締め切っていた病室の扉を開けると庵順応に慣れていた目には毒の光が眩しく、慌ただしく動く看護師の人と何人かすれ違ったが声をかける事は出来そうになかった
なのでその看護師らが行ったり来たりしている主となる方向へ導かれる様に進むがどうにも通った事が無い廊下に違いないのに通った事がある気がしてしまう
________昔、私はここを歩いた事がある…?
開け放たれている一室が目に入る。そこから子供の大声でむせび泣く声が近付くに連れて次第にハッキリ言葉が聞こえだした
「お母さああん……」
鼻声のそれはわかりづらかったが聞き覚えのある物で、チラリと覗くと沢山の白い服を着た医者や看護師がいる中、色を持つ少年と父親らしき人物が立っていた
そこから出てきた一人の看護師に「すみません」と声をかける。すると声をかけた人物は私がいつもお世話になっている人だったので「ああ、Aちゃん…」と名前を呼んでくれた
「あの子…」
「そっか…光輝くんはAちゃんが助けてあげたものね」
助けてあげた、と言われても今の私が助けた訳ではない為何も言えないでいると看護師は悲しそうな顔を隠す様子も無く状況を説明してくれた
「光輝くんとお母さんが貴方の…Aちゃんのお見舞いに来る時に飲酒運転の車が突っ込んで来たらしいの。光輝くんはお母さんが突き飛ばして擦り傷で済んだけど…お母さんは…もう…」
看護師さんは光輝くんの近くに置かれてるボロボロの花束と泥塗れでグシャグシャになったがかろうじて読めるAちゃんへと書かれたメッセージカードを手渡ししてくれた
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雨中と猫。(プロフ) - ちょこさん» うわああああんすみませえええええんがんばります (2022年2月10日 2時) (レス) id: dcb807c257 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます!(´;ω;`) (2021年12月20日 22時) (レス) @page49 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
雨中と猫。(プロフ) - いちごポテトよーぐるとさん» 返信が遅くなりすみません!めちゃくちゃ嬉しいです、現在別作品「笑えないって」リメイク更新中ですのでもう暫くお待ち下さい!! (2021年12月9日 18時) (レス) id: dcb807c257 (このIDを非表示/違反報告)
いちごポテトよーぐると(プロフ) - 色々な感情で涙が……とても面白かったです…。更新待ってます、! (2021年8月17日 0時) (レス) id: 33ba1212be (このIDを非表示/違反報告)
雨中と猫。(プロフ) - 眠夢_さん» うわああああありがとうございます!!今メインで書いている「笑えないって」という小説のリメイクを行っていてそちらが落ち着き次第こちらも更新しようと考えております!絶対完結はさせますので何卒ー!! (2021年8月13日 3時) (レス) id: 6b41ff11b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨中と猫。 | 作成日時:2017年4月29日 2時