page32「それぞれの見方」 ページ40
面会可能時間は残り5分を切った。まだAちゃんの部屋にキヨが居るのかな、と考えるだけで胃酸が込み上げて来そうになる。
助けに行きたいのに、行けない。行った所で何になるのかわかりやしない。拒まれたらと考えればそれは僕の行動を縛った。
「……そらるさん、まだかな」
大人しくやけに素直に彼の帰還を待っていればエレベーターがこの階に腰を据える音が耳に通った。音の方へ興味本位なだけで黒目をそちらに動かすと視界に映ったのは毛先が赤く身長の高いあの男
「…よお、まふくん」
相手は僕の視線に気付いたは良いがその態とらしい挨拶に反吐が出る。
「…もうAちゃんに関わらないで。近づかないで」
負け犬の遠吠えのそれを彼は鼻で笑い「先に喧嘩売ったのはそっちじゃん」と至極真っ当な正論にぐうの音も出ないが喧嘩を売った訳では無く転ばぬ先の杖をついたまでのこと。
杞憂ですみそうも無いと思うのは僕の根底にある芯がそうなっているのだから仕方ない。
「僕はAちゃんを護ろうとしてるだけだよ、キヨとは違う」
「へえ、俺が何かするとでも思ってんの?」
キヨは俺こそが彼女を護ろうとしていると言いたげな表情をぶら下げて厭らしく口角を上げた。バレてないとでも思っているのか余裕たっぷりなその顔面を殴りつけたくなる。
怒りを抑え込もうと自身の腕を見えない様に抓っていると、
「まふくんはアレを自分の物にしたいだけだろ?護るなんてまふくんが言える事じゃねえよ」
その言葉は抓っていた腕からの出血をさせるのに充分だった。
「違う!」
久し振りに出した大声。誰も見当たらない廊下には無駄に響き轟く。
「確かに僕はAちゃんが好きだよ、同仕様もない位に好き。だけど僕は私欲だけの為に動いてるんじゃない!」
感情的になる僕とは裏腹に冷めた目を向けるキヨに堪らなく苛立つ気持ちが更に拍車をかけ沸騰させる。それを爆発された所で解決しないのなんか知ってる。
「"あれ"扱いなんてしないでよ…!キヨはAちゃんの事を何だと思ってるの?お姉さんの代理品?代用品?巫山戯ないでよ」
_________知っている。彼がAちゃんを重ねて見ている事を
_________知っている。彼がAちゃんのお姉さんを好きだったと言う事を
_________知っている
「ただキヨはお姉さんに振られた腹いせにAちゃんに復讐したいだけでしょ?同じ容姿を持ったAちゃんに!」
_________彼が何をしようとしているのかを
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雨中と猫。(プロフ) - ちょこさん» うわああああんすみませえええええんがんばります (2022年2月10日 2時) (レス) id: dcb807c257 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます!(´;ω;`) (2021年12月20日 22時) (レス) @page49 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
雨中と猫。(プロフ) - いちごポテトよーぐるとさん» 返信が遅くなりすみません!めちゃくちゃ嬉しいです、現在別作品「笑えないって」リメイク更新中ですのでもう暫くお待ち下さい!! (2021年12月9日 18時) (レス) id: dcb807c257 (このIDを非表示/違反報告)
いちごポテトよーぐると(プロフ) - 色々な感情で涙が……とても面白かったです…。更新待ってます、! (2021年8月17日 0時) (レス) id: 33ba1212be (このIDを非表示/違反報告)
雨中と猫。(プロフ) - 眠夢_さん» うわああああありがとうございます!!今メインで書いている「笑えないって」という小説のリメイクを行っていてそちらが落ち着き次第こちらも更新しようと考えております!絶対完結はさせますので何卒ー!! (2021年8月13日 3時) (レス) id: 6b41ff11b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨中と猫。 | 作成日時:2017年4月29日 2時