page23「無意識」 ページ31
ハァっと少し熱を孕んだ顔と目で、私を見つめる目の前の彼。
言葉の意味を感情と共に耳に流され、今の状況で彼の伝えたいものの意味が曖昧なまま私の心の場所を取る。
どうしたらいいかわからなくて、彼の顔からぱっと視線を外しても目の行きどころに無意識に悩む。
この重苦しい空気を変えることのできない無力な言葉でなんて声を掛けていいか、どんな言葉を耳に触れさせたらいいか、わからない。
甘くない、苦くない、軽くない。
ただ重い空気。
息が詰まる。目が泳ぐ。
彼は、そんな何も言わない私に気を遣ったのかもしれない。厭、ただ言葉を投げかけただけかもしれない。
「昔も今も、なんで…そらるさんなの…。
いつもそらるさんばっかり」
憎々しげに、かと言って自分を哀れんでいるとも思える声音だった。
それはやけに寂しそうで、彼は何も無い人間に見えた。
いわば、それは私からするとなにかに縋り付いているように見えたのだ。何処か虚無に見えたのだ。
声が掛けれなかった。あんな風に思ってしまった自分が声をかけることなんて出来なかった。
していいものでは無いと思えた。
それでも私は声を飛ばしてしまった。
自分で馬鹿なことをした自覚しかないわけだが、それでもこの空気に飲まれてしまいたくなかったのだ。
「『そらるさんばっかり』って…私はただ、記憶を取り戻したいだけだよ…」
一番言うべきでは無かったのかもしれない言葉が空気に振動して彼に届いた。
だが、ここで終わらなかった。
本当、絵に書いたように思っていない言葉が口から溢れた。
無意識に、そして、ずっと言いたかった言葉を言おうとするかのように私は口が動いたのだ。
「私はそらるさんが…」
彼の鼓膜に音が歩み寄った。
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雨中と猫。(プロフ) - ちょこさん» うわああああんすみませえええええんがんばります (2022年2月10日 2時) (レス) id: dcb807c257 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます!(´;ω;`) (2021年12月20日 22時) (レス) @page49 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
雨中と猫。(プロフ) - いちごポテトよーぐるとさん» 返信が遅くなりすみません!めちゃくちゃ嬉しいです、現在別作品「笑えないって」リメイク更新中ですのでもう暫くお待ち下さい!! (2021年12月9日 18時) (レス) id: dcb807c257 (このIDを非表示/違反報告)
いちごポテトよーぐると(プロフ) - 色々な感情で涙が……とても面白かったです…。更新待ってます、! (2021年8月17日 0時) (レス) id: 33ba1212be (このIDを非表示/違反報告)
雨中と猫。(プロフ) - 眠夢_さん» うわああああありがとうございます!!今メインで書いている「笑えないって」という小説のリメイクを行っていてそちらが落ち着き次第こちらも更新しようと考えております!絶対完結はさせますので何卒ー!! (2021年8月13日 3時) (レス) id: 6b41ff11b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨中と猫。 | 作成日時:2017年4月29日 2時