キ ラ イ 喪 失【そらる】

page9「光希」 ページ17

あれから数分。

「ちょっと、光希！！行くわよ！」


光希と言うらしい小さい男の子は軽い怪我だけで済んだようで、
その子のお母さんの知り合いが此処にいるらしく、今日は偶々この場に居合わせたそうだ。

そしてリハビリに来ていた私を光希くんが見つけ、
その私への謝罪が終わった今。

ようやくその知り合いに会いに行こうと光希くんのお母さんがこの場を去ろうとすると
光希くんは何故か私に懐いてしまい、そちらに向かえないらしい。

そして


「嫌だ！」


このやり取りがさっきから5回程。一向に拉致があかない。



「あの、行って来てください。私、光希くんと一緒に居ますんで…」



「そんな、またご迷惑なんてかけられません！！」



「迷惑なんかじゃないですよ、私もこの子とお話ししたいですし…」



「………すみません、ならお願いして良いですか？すぐ戻って来ますんで…
光希、ちゃんと大人しく待っているのよ！！」



「はーい」



それに光希くんは納得したようで快く返事をした。そして光希くんのお母さんはそそくさとリハビリテーションを後にした。
光希くんはお母さんに手を振った後、キラキラとした好奇心に満ちた目で


「ねぇねぇ、オバさん！ビョーイン探検しよーよ！！」


と今にも走り出して探検しそうな様子で言う。



「光希くん、まずオバさんはやめよっか。私そんな歳じゃないからね？
あと、病院の探検なんてしちゃダメだよ」


まだオバさんと呼ぶのをやめない光希くんに
一応釘を刺し、軽く注意する。



「じゃあ、なんかお話し……あっ！
あのね、オバさんが光希助けてくれた時、男の人が駆け寄って来たんだよ！！

その人、面白くってね！



・






・







・







・




すごい髪の毛がクルクルしてた！！！」

page10「名前」→←page8「リハビリ」

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す