キ ラ イ 喪 失【そらる】

page5「可能性」 ページ13

_______夢じゃ、ない……



花瓶の花や、スマホ、という小さな変化ではあるが、
それは現実で起きたこと と示すには十分で、


安心したと同時にあの人に興味が湧いた。



だから毎日私を見に来てくれる看護師に、
その話をして、此処に誰が来たのかどうか尋ねた。



が、看護師はその話を笑って、誤魔化した。

だから、違う看護師の人にも聞いて見たが、
結果は同じで、望んでいた答えは返してくれない。



_______まるで、誰かに口止めされてるみたい……




だとしたら、誰が何の為に？
私に知られてはいけない人なのだろうか。

疑問は湧くばかりで、答えは一切出てこない。


だが、ぼんやりと





_______あの人が私の友達だとしたら、まふくん達がその人と顔を合わせているかもしれない。






そんな可能性を考えていた。





＊＊＊




「Aなんか考え事でもしてんのか？
ずっと上の空じゃねーか」


次の日、昨日と同じ、まふくんとキヨくんが病室に来てくれた。
2人が駄弁っているのに対し私は聞こうかどうか迷っていて、
その会話に入ろうとしなかった。

それを不思議に思ったのか、キヨくんは私に問いかけた。



_______聞くだけ、聞いてみようかな…



看護師さんが言わなかった理由が重大なことだとしても、
やっぱり気になるものは気になってしまう。

こんな何もかも忘れてしまった状態の今なら尚更だ。




言い訳を心の中で溢して、私は2人に問いかけた。





「……寝ぼけ眼で見たから、よく覚えてないんだけど、
黒髪がフワフワしてる男の人って知ってる？」









その瞬間、病室内の空気が痺れた気がした。

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