【オリジナル】夢のなかで、私は、 (ページ10)

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「北沢さん……？」

青い顔の先生がが口を開く。
恐怖に顔を歪ませて、他でもない私に尋ねる。

「何をしているの……ッ！」

「……わからないです」

私は答える。
イレギュラーが現れたけど、どうでもよかった。
夢の中の先生は原型を留めない醜い肉塊と化していたから。

「わからないわけないでしょう！そこにいるのは、」

「知らないです。記憶にないです」

「そんな嘘みたいな答え……ッ、馬鹿にしないで！貴女は、」

押し問答だ。
私が何を言ったって先生は聞いちゃくれない。いつだってそうだった。
いつだって私を見てはいなかった。

「馬鹿にしてるのは……先生じゃないですか。いつだって私の話、聞いてくれませんよね」

「えっ？」

「わからないです。全部、」

倒れた奴らを踏みつけて前に進む。もうここに用はなかったから。
そんな私の手を先生は掴んだ。

「何を言って……いつも、貴女を見て、」

「……いつも生徒のためとか、私のためとか言って持論押し付けてただけじゃないですか。少しだって私の話に耳を傾けてくれなかった、いつもストレス発散に使われてた、」

「なに、言って……」

「先生は一度も、向き合ってくれなかった」

私は力強く、その手を払う。
もう用はなかった。顔を見られた以上、どうしようもなかった。力強くペダルを踏む。後ろから「あんただって……ッ、私に関心なかったじゃない……ッ！」なんて声が聞こえてきた。

▽

私も先生と向き合おうとしなかった。いや、先生がいつも別の人を見ていたからどうしようもなかった。目立ちたがり屋のあの子を、先生は可愛がっていた。平和主義のあの子と私は、いつだって除け者だった。

血の着いた服を駅のロッカーに入れて、私は電車が来るのを待つ。

ここまで来る途中に、女にわざとぶつかる男がいた。なのでぶつかってきた拍子に、持っていたナイフで腹を刺してやった。男は倒れた。悲鳴が木霊したのが気持ちよかった。

──いつからか、夢と現実の違いがつかなくなった。

妄想のなかでムカつくやつを沢山殺した。
殴って蹴ってナイフで刺した。みんな泣いて叫んで胸がスカッとした。夢の中で私は無敵だった。

ようやくわかった。

あれは夢じゃなかったと。
私は警備員を殺した。道理で最近見ないわけだ。

一体どこから夢だったんだろう。

「……あれ、環？」