【オリジナル】夢のなかで、私は、 (ページ9)

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夢の中で、私は一人の男を刺し殺した。
公園で遊ぶ小学生で向かって、「ギャンギャン喚くな！」と怒鳴った人だった。泣く赤子をあやすお母さんに向かって「うるせぇんだよさっさと泣き止ませろや！」と叫んだ人だった。

……公園は、本来子供が遊ぶためにある場所だ。

だから、人気のない場所で彼を殺してやった。五月蝿かったので最初に喉を切ってやった。泣いていたけど、どうでもいい。これもどうせ夢だから。

▽

最近、何かと事件が多い。
私には関係ないが、お母さんに気をつけるよう言われた。

いつも通り家を出る。閑散としたスーパーにはあの警備員の代わりに、美しい女性が立つようになった。私は警備員のことが嫌いだったけど、どうしたのだろうか？最後に見たのはいつだっけ。
夢の中で彼を殺したのが最後だったか。

「最近、雰囲気変わったわね。何かあったの？」

「……そう、ですか？」

廊下ですれ違った先生は、珍しく私を呼び止めた。久々の会話に、居心地の悪さを感じる。
そんなことを言われるのは初めてだったし、ましてや、この人がそんなに私を見ているとは思っていなかったから。

「良くも悪くも変わったわ。悩みがあるなら言ってちょうだい、先生は貴女の味方だから」

そう言われても、貴女にする話なんて一つもない。むしろ、悩みの種の一つは他でもない貴女だし。
なので、私は今日も歪な笑みを浮かべてお礼を言う。それが、誰ともぶつからない最善策だ。

「ありがとうございます」

▽

由佳ちゃんと別れて、私は家とは正反対の方向に自転車を走らせる。
少し辺りを見て回って、ようやく見つけた今日のターゲット。道行く女性の顔をジロジロ見ては点数をつけてゲラゲラ笑う男達。

私はいつものように目立たない服に着替えて、黒いキャップを深く被った。髪は結んで帽子の中に仕舞い込む。ポケットにはいつもと同じナイフ。

夢の中で私は誰よりも強かった。下品で他者を愚弄する馬鹿共をナイフ一本で蹂躙出来た。奴らの上げる悲鳴はどんなヒット曲よりも私の胸に響いてきた。
ここでなら、全てを忘れることが出来た。

ビクビクと身体を震わす彼等にトドメを刺す。汚い返り血が付着して気持ち悪い。早く帰ろう。親も心配してるだろうから。

そんなとき、

「北沢さん……？」

先生の声が聞こえた。