【オリジナル】夢のなかで、私は、 (ページ5)

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先生に呼び出されて進路指導室に向かうと、部活でお世話になった先生がいた。いや、お世話にはなっていない。文化部だっただけに、始まる前に部室の鍵を開けて、部活が終わった頃に締めに来る、ただそれだけの先生だった。

現に、文化祭の後の反省会兼三年生引退会に先生はおらず、結果的に置き物部長であったよっちゃんの独断会になってしまった。
例年とは全く違う会は、正直いって来年の参考にならないだろう。

「北沢さんの出した書類に不備があってね、ここ書いてきてもらえる？」

「はい、わかりました。ご迷惑をおかけしてすみません」

いつもと同じように頭を下げる。
いつもと同じように謝る。

すると、先生は、

「本当にこんなことで手を煩わせないで。だいたい貴方、来年から大学生よ。自覚がないんじゃないの」

「すみません」

「気持ちがこもってない。本当にそう思ってるの？早く切り上げたいとか考えてるんでしょう」

それから始まった先生の叱責を私は静かに聞き流す。
お世話になったとか、なってないとか関係なくて、少しでも私のことを知っていた先生がこうやって私の前にいることが何か不思議で仕方がなかった。

──初めての失敗、だったんだけどな。

少なくとも、この先生の前で何か失敗するのは初めてだった。部活で関わらないといけないときも、必ず気を回していた。そうか、一度の失敗でここまで怒られるのか。

もう、「次から気をつけて」なんかじゃ済まないのか。

そんなことをぼんやりと考えて、先生の顔を見た。そのとき、私は気が付いてしまった。

──彼女の瞳に愉悦の色が含まれていることを。

なんだ。そういうことか。
結局この人も生徒を怒って憂さ晴らししたいだけなのか。生徒のために言ってるんじゃないんだ。ただ、自分のために言ってるんだ。
そう思ったら不思議と気が楽になって、ただ時間が過ぎるのを待った。

▽

家に帰った私は勉強も程々にベッドに入る。

目を瞑ると、浮かび上がるのは先生の怒った顔と叱責。
それをどうにか消したくて、妄想の中で先生を包丁で刺した。顔の原型がわからなくなるくらいに、何度も殴った。

そうしたら不思議とスッキリして、自然と眠りに落ちていった。

夢の中で、私は先生を殴っていた。先生はなにも言ってこなかった。