【オリジナル】夢のなかで、私は、 (ページ4)

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目覚めは最悪。
帰ってから色々考えたけれど、どうしてあそこで言い返さなかったんだという後悔が渦巻いていた。

反論の余地なんていくらでもあった。それに、彼はあれが初めてじゃないだろう。
同じように大人しい人間を狙って、あたかも正しいことを言って憂さを晴らしているはずだ。
現に、私が警備員から逃げた直後にやってきた自転車の男性には声をかけていなかった。つまりはそういうことなんだろう。

本当にくそみたいだ。

いつもと同じ時間の歩道は、いつもと同じ自転車と歩行者が入り乱れていた。
いつもと同じ警備員がいつもと同じ犬の散歩のおっさんと談笑している。

──珍しく動いたか、と思えば弱者を狙う陰湿さを持つ男。

「…………」

ふつふつと湧く悪意。
私は少し迷ってからペダルを力強く踏み──接触しない寸前の距離で彼らの横を通った。

▽

「ゆかりん～、」

二年生までは三人一緒だったが、三年生になって私は由佳ちゃん、よっちゃんといったふうにクラスが離れた。
よっちゃんは持ち前の目立ちたがり屋のおかげか、クラスにも一応友人はいるらしい。にも関わらず、毎日このクラスにやってくるのは何故だろう。本当にやめてほしい。

「今日も私用事あってさ……、先帰っててね」

「うん」

「え～～～ん、ゆかりんと帰りたかったよ～～！寂しい！」

キャラ付けというか、わざとぶりっ子のような声を出しているのはわかっているが煩わしい。
貴方がいない間、由佳ちゃんは私と一緒に楽しく帰ってるから貴方も友達と帰ればいいさ。

「環も私がいないと寂しいよねぇ！？」

「えっ、あぁ、うん、寂しい寂しい」

「適当な返事！」

三人一緒にいるにも関わらず由佳ちゃんにベッタリとくっつく彼女。いつも思っていたけれど、彼女の存在は私には毒だ。

よっちゃんのことは嫌いじゃない。嫌いじゃないはずなんだ。
友達だし、二年生までは一緒にいたし。ただ、どうしても私はをハブろうとする仕草が、由佳ちゃんにまとわりつく声が嫌だった。

「うえ～ん、主人公が話聞いてくれないよ～」

「ごめん話聞いてなかった」

「ゆかりんも！？ちょっと酷いよ～！」

「ごめんて」

よっちゃんの泣き真似に笑みを零して、私はいつもの輪に溶け込んだ。
今日も一日が始まる。

けれど、胸の奥には接触寸前まで距離を縮めたときの高揚感が残っていた。