【オリジナル】夢のなかで、私は、 (ページ3)

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昨日もよく眠れなかった。
眠れなかったというよりかは寝なかった。遅くまで勉強机にかじりついて参考書を開いていた。そんなルーティンのせいか、最近は寝不足気味で頭が働かない。

「……ぅ……」

うつらうつらと授業を聞いて、板書するノートの下に参考書の問題を書き写した紙を忍ばせる。先生に気付かれないように、受験勉強に励むようになったのはいつからだっけ？

▽

学校が終わり由佳ちゃんと途中の道で別れた。今日もいつも通りの一日だったが、これがいつまで続くかはわからない。ましてや、残された時間は少ない。

大きな歩道には誰もいない。時間が時間だから帰宅する学生にも鉢会わなかったらしい。けれど、歩行者もいないなんて珍しい。ましてやスーパーがあるのに閑散としているのはどうなんだろう。けどまぁ、通りやすければそれでいいか、そう思ってペダルを踏む。

そんなとき──、

「そこのきみ」

「…………」

いつも働いていない警備員に呼び止められた。

丁度スーパーの前だ。いつもと違う状況に私は少し目を丸くした。いや、心情的には驚いたけれど、このときの私はむしろ目を細めていたに違いない。

「ちょっとここ歩道なんだけどわかってる？自転車は車道走ってくれないと」

「……はぁ、」

「はぁ、じゃないから。聞いてる？だいたい今時の高校生は人の話を──」

確かに自転車は車道を走るべきだ。
けれど、歩行者が一人もいない歩道を走ってはいけないのだろうか？勿論、駄目なんだろうけどみんなやってるじゃないか。むしろ、歩行者がいるときだって堂々と走ってる。
いまどき自転車を持たない人間も少ない。この警備員だって、歩道を自転車で走ったことがあるのは確実だ。

「……気をつけます」

私は口先の謝罪を言って、再び歩道でペダルを踏んだ。
警備員の声に愉悦の感情が含まれていたからだ。

「あっ、おい、お前──！」

この人は弱者を狙っていたのだろう。
日々のストレスをぶちまけても言い返してこない大人しい人間を。
私はそれに合致した。だから人のいないタイミングを見計らって声をかけられた。

あほくさ。

警備員が何かぶつくさ言ってるのが聞こえたけれど、睡眠不足の私にはそれを相手にすることすら億劫だった。
後ろに私服の男性が自転車を漕いでる姿が見えたけれど、警備員は彼に声をかけることはなかった。