【オリジナル】夢のなかで、私は、 (ページ1)

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いつも同じ時間に家を出る。
理由は特にないけれど、それはきっとみんな同じだ。社会人も学生も決められた時間を目指して目的地に向かうのだ。

「…………」

家を出て最初にすれ違うのは自転車に乗りながら煙草を吸うおじさんだ。煙草を吸っているのが原因か、それとも歳なのかわからないけど、いつも見ていて不安になる運転をしている。

そんなおじさんは今日も元気に煙草を吸って対向からやってきた。

──ふわり、

煙草の煙が鼻をかすめる。
副流煙が私の鼻を通して臓器に侵食してくる。この瞬間が私は何よりも大嫌いだった。
自分の意思ならまだしも、他人の配慮のない行動で己を痛めつけるのは許せなかった。

けれど、なにも出来ない私は今日も心の中で舌打ちをして通りすぎる。

強くペダルを踏むと、向かい風が私の髪を大きくなびかせた。

▽

大きな歩道はいつも自転車と歩行者で入り乱れていた。
車道を走らなくては、と思うけれど通勤通学ラッシュの時間帯は車の通りも激しく通れたものじゃない。

少しだけ偏差値の高い高校の制服を着た女の子たち。彼女らは当然のように並列になって自転車を漕ぐ。大きな歩道でよかった。自転車だけでも三、四台は通れそうな程に大きい道は、追い越すのにも最適だ。
歩行者に当たらないよう徐行して追い越すと、最近出来た大きなスーパーが見えてくる。出来る前はそれなりに楽しみにしていたが、いざオープンするとちんけなもので開店以来入ったことがない。
中途半端な規模故に警備員もいるが、あの人はいつも暇そうに犬の散歩のおじさんと雑談をしている。あの警備員がまともに働いているところを、私は見たことがなかった。

「てか、一限から体育とかマジ勘弁なんだけど」
「それは可哀想。えっ、そっち今なにやってんの？試合やった？」
「まだ。たしか今日、サーブのテストだった気がするけど」

後ろから聞こえてくる会話。
違う学校の話はわからないけど、やってることはどこも一緒だ。ましてや、うちの高校よりもほんの少し頭がいいだけの高校なら、授業内容はほとんど変わらないだろう。
……なのに、この高校の人達は私達を「馬鹿だ」といって笑ってくる。大して変わらないくせに、いつもそうなんだから救えない。

アホくさい。

私はまた強くペダルを踏もうとしたが、信号が赤になったのを見て力いっぱいブレーキをかけた。