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____俺の手の届く所に来い


そう聞こえた気がして、でもそれだけじゃ足りなくてその胸板に顔を預けて、シャツをくしゃっと握り締めた

そんな私を庇うように、逞しくて力強い中也の腕が回される



「しっかり捕まっとけよ」

「__ん」



莫迦、云われなくたって絶対離すもんか

震える喉じゃ上手く声には出せないけれど、その分想いを強く込めて、全身全霊抱き締め返す

と、軽くなった体は、そのまま重さを捨て去って




地面から離れた足、たなびく髪と衣服

喧騒が下の方向へと遠のいて、中也に引っ張られるようにふわふわする

大きくなった風の音に、薄目を開けて辺りを確認してみれば




「___へ」




いつもより近くなった空のもと、夜の黒の中を泳ぐ鳥達と、同じ目線、同じ視界

ほら、雲にだって手が届きそう


中也と私は空中に二人、浮かんでいた



「え、待っ、此処って空!?」

「見たら判んだろ」



判るけど信じらんない、夜空の中を漂うなんて

それもましてや、好きな人と、こんなに近い距離に居ながらなんて


「おら、良い眺めだぞ」と、優しい目配せ

つられて驚きも半ばに顔を向ければ、広く、遠く、果てしなく見渡せる景色

車も家も、高層ビルも、ボロボロになったパーティー会場も

全部遥か下の世界に小さく見えて、何だか不思議な感覚がした




「なんで空に」

「手前に怪我させねぇ為だよ」

「任務はもう良いの」

「後始末は彼奴らに頼んどきゃ良い」




ふーん、とか何とか、下手くそな相槌で精いっぱい

だって気が気じゃないのだ、この忙しない心臓の音が中也の耳に届いてないか心配で

きっと胸がうるさいのは、さっきまでの興奮とか恐怖とか、今空に居る驚きとか、それら全てを足しても足りない別の理由



「んなことより」



肩を抱き寄せられた姿勢から一転、そっとお姫様抱っこのような形に抱き直されて

中也の香りに満たされた胸が、反応して熱くなる



「A、こっち向けよ」

「っ……な、んで」

「良いから、俺を見ろって」



何度呼ばれても、なかなか中也の方を向けない

誤魔化すように夜景に目をやってれば、遂に中也が溜め息を吐いて、諦めてくれたかと思った

___次の瞬間

闇を飾るのはどれが星の光か文明の光か、そんな境目はもう、どうでも良くなっていた




「____なあ、手前が好きだ」




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ライム - めっちゃ最高でした!!中也かっこよすぎてつらいです!こんな最高の作品を生み出してくださってありがとうございます!!!! (2022年12月26日 17時) (レス) @page43 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
なかはらあお(プロフ) - はじめまして、作品見させていただきました。お話の構成も内容もとても素晴らしく感動しかありません、どんぐり様のこれからのご活躍心より期待しております。長文失礼致しました。 (2018年4月22日 10時) (レス) id: a71351843d (このIDを非表示/違反報告)
藍音 - 凄く面白かったです!私の名字もナカハラがよかった... (2018年2月7日 0時) (レス) id: a82b5889f9 (このIDを非表示/違反報告)
- 完結おめでとうございます!!きゅんきゅんしました…! (2018年2月1日 22時) (レス) id: c5a450a737 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - こんな時間に一気に読んでしまいました〜。眠たいのにドキドキが止まらなくて寝付けそうにありません!!(>_<) (2018年2月1日 2時) (レス) id: c23d485c4b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:どんぐり | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年9月13日 23時

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